芥川賞受賞作『スティル・ライフ』も! 池澤夏樹の電子書籍がついに「Kindleストア」でも販売開始

文芸・カルチャー

更新日:2017/11/16

 「第98回 芥川賞」受賞作『スティル・ライフ』をはじめ、多くの作品を世に輩出し、各賞に輝いてきた作家・池澤夏樹。2016年2月5日(金)、「impala e-books」シリーズとして電子化を進めてきた池澤作品が、Amazon「Kindleストア」でも販売開始された。

 池澤は電子書籍登場の際、「面白いな、新しい読み方ができるかもしれないと思った」としつつも、参入を断っていた。しかし、一般の読者に電子書籍が広く普及すると共に、紙にはない新しい機能や使いやすさの向上などを理由に、「おそるおそるではなく、満を持しての刊行」と出版社の枠を超え、2014年7月にイクスタンとボイジャーが提携する「impala e-books」をスタート。作家にできるだけ多くの印税を確保すると同時に、電子書籍の底本となる印刷本の出版社とも売上げをシェアする形で、これまでに54点を刊行・販売してきた。

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 その後も2015年7月に、1周年記念として「池澤夏樹レビューコンテスト」をWeb上で開催したり、同年12月には『うつくしい列島』の新刊キャンペーンとして、印刷版の購入者に電子版をプレゼントするなど、作家・読者・印刷本の出版社とも連携しながら、デジタルでの出版活動を進めている。

 そしてこのたび、販売環境が整ったことを受け、「Kindleストア」での販売を開始。まずは、既刊54点のうち30点と、2月5日(金)刊行の短篇集3点を合わせた計33点が販売された。なお「impala e-books」では、今後も毎月2~4点を継続して刊行。当初から取扱いのあった書店、および新たに加わった「Kindleストア」を通じ、多くの読者に本を提供していく。

<刊行作品一例>
小説デビュー作夏の朝の成層圏
漂着した南の島での生活。自然の試練にさらされ、自然と一体化する至福の感情。それは、まるで地上を離れて高い空の上の成層圏で暮らすようなものだった。暑い、さわやかな成層圏。やがて、夢のむこうへの新しい出発が訪れる―青年の脱文明、孤絶の生活への無意識の願望を美しい小説に描き上げた長篇デビュー作。

「第98回 芥川賞」受賞作スティル・ライフ
遠いところへ、遠いところへ心を澄まして耳を澄まして、静かに、叙情をたたえてしなやかに…。清新な文体で、時空間を漂うように語りかける不思議な味。ニュー・ノヴェルの誕生。

「第29回 谷崎潤一郎賞」受賞作マシアス・ギリの失脚
南洋の島国ナビダード民主共和国。日本とのパイプを背景に大統領に上りつめ、政敵もないマシアス・ギリはすべてを掌中に収めたかにみえた。日本からの慰霊団47人を乗せたバスが忽然と消えるまでは…。善良な島民たちの間でとびかう噂、おしゃべりな亡霊、妖しい高級娼館、巫女の霊力。それらを超える大きな何かが大統領を呑み込む。豊かな物語空間を紡ぎだす傑作長編。

「第3回 親鸞賞」受賞作静かな大地
短い繁栄の後で没落した先祖たちのことを小説にするのは、彼らの物語を聞いて育ったぼくの夢だった…。明治初年、淡路島から北海道の静内に入植した宗形三郎と四郎。牧場を開いた宗形兄弟と、アイヌの人々の努力と敗退をえがく壮大な叙事詩。著者自身の先祖の物語であり、同時に日本の近代が捨てた価値観を複眼でみつめる、構想10年の歴史小説。