「女性誌の本気の取材力で、猫を扱うとこうなる」を実践しちゃった一冊『ねこ自身』※袋とじ付

文芸・カルチャー

更新日:2017/11/16


『ねこ自身』(女性自身編集部/光文社)

先日、大手出版取次会社が自主廃業を視野に入れて取引先に説明会を行うという報道がありました。このサイトを見ている方には、とりわけ出版業界および本好きの方が多いでしょうから、ご存じどころか、とてもひとごとではない、という方も少なくないと思われます。書籍は売れていません。コンテンツとしては熟れているのに、売れていないのは、これいかに。妄想編集者飲み会で使い古された、そんなダジャレも出てきてしまうってもんです。

そのような混迷する状況では、すぐ売上につながる手練手管が脚光を浴びてしまいますが、これまたすぐに飽きられるのが関の山。「人間は結局、できることしかできない」と痛感するまでのカウントダウンが始まるのです。

そうとなれば、最初っから「できることを、とことんやり尽くす」という選択肢が見えてきます。往々にしてそっちのほうが早道だったりしますよね。今回紹介する『ねこ自身』(女性自身編集部/光文社)は、女性誌が今まで培ったノウハウとコネクションと能力を注いで注いで、注ぎまくって、猫に一点集中強行突破した一冊、いや、突破してしまった一冊と言っても過言ではないでしょう。「え、本当にやったの?」的な驚きが、表紙を見ただけでも伝わってくるのであります。

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表紙を開けば、人生の喜怒哀楽をすべて詰め込んだ、2時間サスペンス感、もしくは、みのもんたナレーションによる往年の「珍プレー・好プレー大賞」感と言えばアラフォーの皆々さまにも伝わるでしょうか。猫グラビアに肉球占い、猫マンガに読者投稿、地域猫活動や震災と猫といった硬派な社会問題、猫飼い主の緩んだ笑顔を混ぜあわせながら、さり気なくしっかり読ませる広告ページ。そして初SEXYとの煽り文句で誘惑する袋とじまでプラス。ありとあらゆる週刊誌の手法を詰め込んでいるのです。

もしWEBのメディアでこれをやったらですね、一記事読んだらお腹いっぱいになって、すぐ離脱してしまうのではないかと思います。でも『ねこ自身』は、そうなりません。その要因は書籍(雑誌)というフォーマットや前述の手法ではなく、「取材力」なのであります。

読み手の欲しい情報が載っているのならば、英語のWEBサイトであろうと、読みづらい論文であろうと、読み進めてしまう順応性が、人間にはあります。その根源は情報の有用性であり、生み出すのは週刊誌が培った取材力なのであります。あの煽り文句だというのに、開いてもがっかりしない袋とじの内容が、それを物語っているようにも思います。

文=猫ジャーナル