ブラ透け…!? ズボラで微エロな“ヒロコ先生”の生みの親、元芸人マンガ家・ムラタコウジ氏インタビュー!

マンガ

公開日:2016/2/26


『野球部のヒロコせんせい』(ムラタコウジ/小学館)

 女教師――。なんとも淫靡な響きを持つこの単語、耳にした瞬間にピクリと反応してしまうのは、哀しいかな男のサガである。そんな女教師を独自の目線で描いたのが、『野球部のヒロコせんせい』(ムラタコウジ/小学館)だ。

 本作は、突然野球部の顧問に任命されてしまったヒロコ先生と、その部員たちとの交流を描いたコメディ。とはいっても、熱血スポ根モノとは程遠い。部員たちはデブでやる気のない者ばかり。おまけに肝心のヒロコ先生自身が、やる気のやの字も見せないぐーたら人間なのだ。

 じゃあ、なにがテーマなのかというと、それは微エロ! ズボラなヒロコ先生は、チャック全開だったり、ブラがシャツから透けていたり、ストッキングに陰毛がついていたりと、隙だらけ。しかし、そんなことをまったく気にしないときたから、思春期まっただ中の部員たちは、興奮しっぱなしなのだ。いやはや、こんな先生が本当にいたらよかったのに……!

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 この男の理想像(?)を生み出したムラタ氏は、なんと昨年の『このマンガがすごい!2016』にて「この新人がすごい!」にも選出された期待の新鋭。しかも、芸人からマンガ家に転向したという異色の経歴を持つ人物なのだ。ということで今回は、ムラタ氏に直撃インタビューを敢行してみた!

ムラタコウジ氏

――芸人を辞めてマンガ家になろうと思ったきっかけを教えてください。

ムラタコウジ氏(以下、ムラタ)「芸人を辞めてしばらくコンビニでバイトしてたんですけど、自分が今後なにをすればいいのかわからなくなってたんですよね。そんなときに仲が良かった放送作家志望の子から『ムラタくん、絵がうまいんだしマンガ家を目指してみたら?』って言われて、確かに絵には少し自信があったので、じゃあ一回くらい投稿してみようかなって思ったのがきっかけです」

――それでいきなりマンガを描くっていうのはハードルが高いような気もしますが……。

ムラタ「ちょうどその頃、池袋でマンガを描くためのカルチャースクールがあったんです。しかも、ぼくの好きな古泉智浩先生が教室を開くってことで、佐藤秀峰先生や小田原ドラゴン先生なんかも参加されるという情報を見て、これは行ってみようと。マンガのための専門学校ではなかったので、趣味で描きたい人とかプロのマンガ家に会いたい人とか、本当にいろんな人がいましたね。でもぼくは本気だったので、そこで出される宿題も気張ってやったりして」

――そこでマンガの描き方を一通り学んだんですか?

ムラタ「そこではマンガ作りとはどういうものか、を教わりました。で、あとはやっぱり自分で勉強していくしかないんですよね。なので、独学で勉強しつつ、とりあえず一本描いてみようと思ったんです」

――その第一作はどういうものだったんですか?

ムラタ「講座を一緒に受講していた友人が原作者になって、ぼくは作画を担当したんですけど、三十歳になった座敷わらしの話でした。それをヤンマガに持ち込んだんです」

――反応はどうでしたか?

ムラタ「コテンパンでしたね(笑)。『きみの絵は下手すぎる』って。しかも、いま第一線で活躍されているプロのマンガ家さんの生原稿を見せてもらったときに、『これがプロの原稿なんだよ』って言われました。悔しかったですけど、逆に燃えましたね」

――それはなかなか厳しいですね……。それからどういう経緯でデビューに至ったんですか?

ムラタ「その後、佐藤秀峰先生が個人で開催されている『ネーム大賞』っていうコンテストがあって、それにひとりで描いた作品を応募してみたんです。そしたら佳作に選ばれて、それを元にした作品をスピリッツに出してみたんですよ。それも佳作になって、担当さんがついてくれたんです」


――そこから『野球部のヒロコせんせい』が生まれたんですか?

ムラタ「そこからも結構長くて、何個かネームを描いて担当さんに送っていたんですけど、あんまり反応が良くなかったんですよね。でも、そこで諦めたくなかったから、『じゃあ、良い返事がくるまで見せ続けよう』ってずっと描いてたんです。そこで引っかかったのが、『野球部のヒロコせんせい』の元になった作品。『これなら月刊スピリッツに載りますね』って言われました」

――デビューが決まったわけですね。相当うれしかったのでは?

ムラタ「いやぁ……、正直あんまり自信がなかったので、知り合いの反応とかが怖かったです。いま思えば、絵もすごく下手でしたし。恥ずかしいなって気持ちの方が強かったかもしれないですね」

――なるほど。『野球部のヒロコせんせい』のアイデアはどこから生まれてきたんですか?

ムラタ「ぼく、高校時代に野球部だったんですけど、ぼくの代が史上最弱って言われてて。上からも下からも弱い奴らって思われてたから、あんまり真剣じゃなかったんですよね。だから、マンガに出てくる部員たちがデブでゲームばっかりしてるのは、自分の経験が自然と反映されてるかもしれないですね。あと、教員免許ももってるので、もしも自分が教師だったら、ヒロコ先生みたいにダラダラやってたかもなぁと思います(笑)」

――ちなみに、そんなズボラなヒロコ先生はタイプですか?

ムラタ「う~ん……、隙のある女性は魅力的ですけど、あそこまでいっちゃうと(笑)。バランスは大事かもしれないですね」

――確かに(笑)。残念ながら、本作は完結してしまいましたが、次回作の構想はあるんですか?

ムラタ「はい、いま準備中です! あんまり詳しいことはお話できないですけど、次回作はもっと絵が上達してると思います。ぼく、絵にすごくコンプレックスがあるんです。『元芸人だから、どうせユルい絵でギャグ描いてるんでしょ?』って思われるのが嫌で。だから、プロのなかでもうまいって言われるくらいになりたいんです。そのために、身体のラインとか人体の構造を勉強してます。楽しみにしててほしいです」

「元芸人」ということに甘んじたくないと語るムラタ氏。穏やかな語り口のなかに、マンガ家としての向上心が滲んでいたのが印象的だった。本作で“ずぼかわ”というジャンルを開拓した彼が、次はどんな作品を描くのか。願わくは、またちょっとエロい女教師を描いてほしいところ。全国の男子諸君がムラタ氏の次回作を心待ちにしてますよ!

取材・撮影・文=前田レゴ