「五七五の小説工房」で俳句を公募! 俳人・堀本裕樹さんが選評後、田丸雅智さんがショートショート作品を紡ぐ【後編】

文芸・カルチャー

2016/2/25

(左)堀本裕樹さん、(右)田丸雅智さん

定期的にWEBで俳句を公募し、選ばれた句をショートショート作品として紡ぐ企画「五七五の小説工房」。そのオープンを記念し、お二人の共通の友人であり、芥川賞作家の又吉直樹さんによる句「啓示無きひかりばかりや夜光虫」と、堀本裕樹さんの句「敷島の天砕けなば龍の玉」を、田丸雅智さんがショートショートとして作品化したものが双葉社の文芸WEBマガジン『カラフル』で公開される。さて【後編】では堀本さんの句とショートショート作品となった『スカイリウム』について、そして応募する際の心構えまで語っていただいた。

【前編】はこちら

俳句を始めると「季節」に敏感になる

田丸 僕は愛媛県松山市の生まれなので俳句が盛んで、小学生の頃からやっていたんです。しかも高校が正岡子規の出身校で、先輩には俳人の神野紗希さんとか佐藤文香さんがいたりするんですよ。なので「俳句にかぶれてます」という言い訳をして、ツイッターなどで句を作って発表しているんですが(笑)。俳句って心に引っかかった瞬間とか、今の気持ちを表現したい、というときに作りたくなるんですよね。

堀本 はい、そうですね。

田丸 それでこの前、ちょっと切ないなと思う瞬間があって。バーでジャズを聴いているときだったんですけど、飲んでいたお酒の氷が溶けて、水になっていくことが自分の中の虚しさと合致して、それを俳句にしたんです。「カクテルは水に変わりて寒九かな」という句なんですが。

堀本 シチュエーションがなんだかかっこいいですね(笑)。

田丸 いやいや、ホントに感じたんですよ!(笑) それでスマートフォンの歳時記アプリで季語を調べて、「寒九かな」という下の五音を探したんですよ。

 

堀本 「寒九」というのは冬の季語で「寒に入って九日目」という意味ですね。ジャズの名曲「レフト・アローン」とか、氷がカランと鳴るイメージとか、そういう情景を描いて季語を組み合わせた、なかなかいい句ですよ。

田丸 いやあ、添削されるのって怖いですね……(笑)。でも俳句を始めると、季節に敏感になりますよね。そろそろ梅が咲いたから、桜はもう少し先だな、とか思うんですよ。実は僕、堀本さんと又吉さんの『芸人と俳人』(集英社)を読んで、難しそうなイメージのあった俳句のハードルがすごく下がったので、あちこちでこの本をお薦めしてるんです!

堀本 セールストーク、ありがとうございます(笑)。

田丸 本当に面白いんですよ、この本。最近ある日本画の先生と親しくしているんですけど、その方は連句をやっているそうなんですよ。これが日本の四季や機微、グラデーション、ニュアンスを感じ取るのにとてもいいそうで、自分の作品作りに活きるそうなんです。誰かが作った俳句に触れることで、人の感じたことが自分に迫ってくる感じってありますよね。それで今回は堀本さんの句「敷島の天砕けなば龍の玉」を『スカイリウム』というショートショートにしたんですが……楽しかった!

堀本 作品を拝読しましたけど、僕の句がこんな感じになるんだと感激しましたよ。ちなみに「敷島」というのは日本を意味する言葉で、その天が砕けるイメージと龍の玉を取り合わせた句です。龍の玉って、小さくて美しい青い色をしているのですが、それをショートショートとして世界を広げていただけた、しかもカタカナのタイトルというのは驚きました。俳句で使った季語である「龍の玉」が、小説の核となる美しい「空珠」になるとは思ってもみませんでした。こういう広げ方をしてショートショートが生まれるんだな、という新鮮な楽しさがありました。

田丸 まず僕は「敷島」って言葉がわからなくて、それを調べることから始めたんです。それが日本という意味だっていうことを知って、とても感性をくすぐられて「書きたい!」という衝動に駆られましたね。僕がひとりで考えたら絶対に出てこないものだし、とてもインスパイアされました。

堀本 その空を見ることのできる「スカイリウム」に僕も行ってみたいな、と思わされましたし、「空珠」を手にしたいとも思いました。古典的な美しいものと近未来の世界観がぶつかり合う、というのはとても面白かったです。

落選しても続けることが当選への近道

堀本 「五七五の小説工房」では俳句を公募して、僕が選評をつけて、その中から田丸さんがピンときたものをショートショートにするわけですけど、これってとっても「お得」ですよね? 俳句に選評がつくのは一般的ですが、さらにそれが物語になるのって、俳句を作った人にとって贈り物になるし、これに参加しない手はないな、と思うんですよ。

田丸 そうですよね! そして今思ったんですけど、俳句からショートショートの逆もできますよね。ショートショートを募集して、僕が選評をつけて、それを堀本さんに俳句にしてもらうという。どうでしょう?

堀本 いいですねぇ。「五七五の小説工房」はいろんな新しい企画が生まれてふくらんでいく、という面白さがありますよね。

田丸 ホント、いくらでも広がりますね! そのためには、たくさんの方に応募してもらわないと。

堀本 腕におぼえのある方はもちろんですが、これがきっかけで俳句に初めて挑戦するという人もいらっしゃると思うんです。でも気負わず、自分の中で完璧にしようとせずに、どんどんチャレンジしてもらいたいと思います。また何度応募しても落選ばかりだと「才能がない」とやめてしまう方がいるんですが、それでは俳句は上達しませんし、もったいないです。

田丸 そうなんですよね。何度も応募してください!

堀本 僕もアマチュアの頃に何度も落選しましたよ(笑)。でも落選したときが上達するチャンスで、入選した句と自分の句を比べて、どうしたらよかったのかと考えることが大事なんです。学校のテストと同じですよ。自分が間違ったところを復習すると、次からはもう間違わない。落ちても諦めずに、さらに推敲する。それがいつか入選するコツです。

田丸 そうですね。僕は句を見てワクワクしたいですね。堀本さんがどんな句を選ぶのか、とっても楽しみなんです。それが僕にどう影響するのか、どんな新しい世界に連れて行ってくれるのか……というか、ぜひ僕を新しい世界へ連れて行ってくれませんか、とお願いしたいですね!

堀本 田丸さんが句に触発される度合は、僕よりも大きいですからね。入選した句を見て、それを自分の作品にするわけですから。今までに無い刺激になりますよね。

田丸 そうなんですよ! もしかしたら「五七五の小説工房」は、僕たちが一番楽しみにしているかもしれないですね(笑)。

堀本 そうですね(笑)。作品のご応募、お待ちしています!

●双葉社文芸WEBマガジン「カラフル」(毎月10日、25日更新)
●「五七五の小説工房

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取材・構成・文=成田全(ナリタタモツ)