例の“四国がオーストラリアになってしまった地図”の件、元ネタはこの本だった?

文芸・カルチャー

2016/2/28


『四国はどこまで入れ換え可能か』(佐藤雅彦/新潮社)

最近、「不適切な日本地図」という、聞き慣れない単語を耳にされた方はいらっしゃいませんか? 日本地図が不適切…地図なんて大型書店に出掛ければ手に入りますし、それに今の時代、Googleマップなんて便利なものもありますよね。そもそも、地図に不適切も何もあるものか、というところではありますが、どうやらこの世には確かに、「不適切な日本地図」なるものが存在するようなのです。

2016年1月、フジテレビは同局が放送した番組のなかで、「確認不足により、不適切な日本地図を引用」したとして、webサイト上に謝罪文を掲載しました。実際に番組で使用された日本地図は何と、四国がオーストラリアに置き換えられているという不思議なもの。四国とオーストラリア…確かにおおよそのカタチとしては似ていますが、それらを入れ換えた日本地図を一体、どこで見つけてきたというのでしょうか。

フジテレビの謝罪文によれば、今回の間違いはあくまで「確認不足」による「引用」のミス。つまり、「地図そのものは俺たちが作ったわけじゃねえよ!」との主張をおこなうと同時に、その地図を用いたことにも悪意等がないことを表明しています。勿論、それが事実かどうかは、一介の視聴者には確かめる術もありませんが…。

しかしこの、四国とオーストラリアを入れ換えるという大胆な試みを、うっかりやイタズラ心ではなく、クリエイティブな思考実験の結果として発表した本が、実は過去に出版されています。それが今回ご紹介する、『四国はどこまで入れ換え可能か』(佐藤雅彦/新潮社)です。

同書は、So-netのコンテンツ『ねっとのおやつ』にて配信されたアニメーションを元に刊行されたもの。著者である佐藤雅彦氏は、NHK教育のテレビ番組『ピタゴラスイッチ』の監修や、ヒット曲「だんご三兄弟」の作詞・イラスト等で知られる人物です。電通勤務時代には、「バザールでござーる」や「ポリンキー」など、数々のヒットCMも手掛けています。キュートなイラストの数々を見れば、何となく見覚えがあると感じる方も多いことでしょう。

収録されている約100本のショートコミックは、どれも数ページサイズとコンパクト。しかし、そこに詰まった情報量や、思考のスイッチを入れる爆発力のようなものは計り知れません。一話一話が単に短いのではなく、不要なものをそぎ落とした、ミニマムな美学を感じられます。

個人的なお気に入りは、ちょっとブラックな「身投げ」や「運び屋」、意味が解ればハッとする「ぼうふら―a mosquito larva―」に、胸がぎゅっと締め付けられるような「内面的サイコロ」等々…挙げていけばキリがありません。『ピタゴラスイッチ』にも登場する「フレーミー」の原型となった「枠々犬(わくわくけん)フレーミー」も掲載されていますから、同番組ファンの方にもオススメです。

勿論、タイトルとなっている「四国はどこまで入れ換え可能か」も、豪華センターカラーにて掲載。オーストラリアを四国に置き換える際の適当な縮尺についても触れており、この実験が遊び半分のいい加減なものではないことを示しています。そしてそれは、佐藤氏が同書のあとがきに添えた言葉からも伝わってくるもので…。

そして、最後になってしまいましたが、四国のみなさん、勝手に入れ換えをしてすみません。

こんなふうにきちんと、配慮を残しているのです。

仕事や勉強で疲れたアタマをほぐしてくれそうな可愛い一冊。学生さんから社会人の方まで、リラックスタイムのお供に、いかがでしょうか。

文=神田はるよ