たまには萌えを忘れて、かっこいい男に惚れてみてはいかがだろうか?

マンガ

更新日:2016/3/11


 心がぴょんぴょんしたり、ガルパンはいいぞと呟いたり、ローソン鹿島を手に入れた友人に自慢されて悔しがったりと日々萌えを探求するミソボーイな筆者だが、中高時代には『カウボーイビバップ』のスパイクやジェットのテレカや下敷きを買うほど、かっこいい男に憧れていたりもした。そう、”かっこいい男”が活躍する話も好きなのだと改めて思う。

 これは私だけでなく、男が惚れる男の活躍にも触れてみたいと思っている人は少なからずいるのではないか? KADOKAWAから2016年2月15日(月)に「ノベルゼロ」という新しい小説レーベルが創刊したが、このような需要を見越してであろう。かっこよさの基準は多種多様で、時代によっても変化するものだが、ここはあえて、過去の人気ライトノベルや最近の作品から“かっこいい男”が登場する作品を主人公のタイプ別に紹介したい。

 

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■まじめで実直な成長型の主人公

 ライトノベル創世記。『アルスラーン戦記』(田中芳樹)に始まるファンタジーブームのなか、同作の主人公・アルスラーンや、『ロードス島戦記』(水野 良)のバーンは、まじめで実直な成長型主人公だった。

 現在、アニメ放映中である『灰と幻想のグリムガル』(十文字青)の主人公・ハルヒロもこのタイプだ。特筆すべきところは何もない少年である彼は、ひたすらにゴブリンを倒し、自分が、そして仲間が生き残るため、少しずつ歩を進めていく。この愚直さは、カッコよさとは程遠い。だが、それがリアルで、へこたれない姿勢は賞賛に値する。目的を見定め、そこへ向かってひらすらまい進する男はかっこいいのだ。三浦勇雄の新作、『皿の上の聖騎士〈パラディン〉』のアイザックも同様。コンプレックスを抱えた彼が、人生を賭けた決断をする。その瞬間はまさに爽快の一言。

皿の上の聖騎士〈パラディン〉

『皿の上の聖騎士〈パラディン〉)』
三浦勇雄 / ノベルゼロ

フィッシュバーン家には伝説がある。大平原“大陸の皿”を統べる大国レーヴァテインがまだ皿の中の小さな辺境国にすぎなかった頃、ご先祖様が大陸中の霊獣を訪ね歩いて防具を授かり、集まったそれらは一着の聖なる甲冑と成った。――それが全ての始まりだった

 

■圧倒的な技量を持った主人公

 ファンタジーから日常へ、舞台を変えていったライトノベル。そこに登場したのが、『フルメタル・パニック!』(賀東招二)の相良宗介だ。強く、たくましく、どんな困難も乗り越えていく力と技量を持った男の、どこか的外れな言動は、当時の、そして今の読者をも夢中にさせる。 この系統が読みたいのなら、『皇国の守護者』(佐藤大輔)もおすすめだ。

フルメタル・パニック!

『フルメタル・パニック!』
賀東 招二 / 富士見ファンタジア文庫

楽しい学園生活、美少女を守る最強の男の子、巨大ロボット、次々襲い掛かってくる危機!年代を問わず誰もがワクワクする物語が読みたいならフルメタにお任せ!第1巻を読み終えた時、きっとあなたはフルメタファン!

 

■有り様に共感を覚える主人公

 能力的な強さではなく、有り様がかっこいい男たちもいる。 自分のために、ではなく、相手のために必死になる男たちだ。『とらドラ!』(竹宮ゆゆこ)の高須竜児、『我がヒーローのための絶対悪(アルケマルス)』(大泉 貴)の沖名武尊など。

 そして、最たる例が『ゼロの使い魔』(ヤマグチノボル)の平賀才人。浮気者だが、ルイズのためならば何万の敵にも立ち向かう才人の行動原理はただ一つ。ルイズを悲しませないこと。それに尽きる。ラブコメ・ハーレム要素が注目されがちな本作だが、このシリーズを支えているのは、この才人の有り様だ。

ゼロの使い魔

『ゼロの使い魔』
ヤマグチノボル / MF文庫J

「あんた誰?」―才人が目を覚ますと、可愛い女の子が覗きこんでいた。見回すとあたりは見知らぬ場所で、魔法使いみたいな格好をしたやつらが取り囲んでいる。その女の子・ルイズが才人を使い魔として別の世界へ「召喚」したらしい。仕方なく、ルイズとともに暮らしながら、元の世界に戻る方法を探すことにした才人だが…。

 

■言葉と頭脳を武器にして戦う主人公

 才人と対象的な存在が、『AHEADシリーズ 終わりのクロニクル』(川上 稔)の佐山・御言。自分の役割に自覚的、ハード&タフな男だ(しかし変態)。相手の事情と感情を正面から受け止め、まとめ上げるその手腕と度胸とカリスマ性は圧倒的。

 言葉と頭脳を武器にして戦う佐山のような男がお好みならば、「戯言」シリーズ(西尾維新)や、ラノベ版『逆転裁判』とも言うべき『無法の弁護人』(師走トオル)がいい。「悪魔の弁護人」と呼ばれる阿武隈譲の、モラルと正義感から程遠いやり口は、法的にはギリギリだが、世間が提示する善悪ではなく、目的達成のため手段を選ばない、手を汚すことをためらわない男は魅力的なのだ。

無法の弁護人

『無法の弁護人』
師走トオル / ノベルゼロ

「無実の罪を着せられた人々を救いたい―」そんな理想に燃える新人弁護士の本多は、初めての刑事裁判で苦戦を強いられていた。やむを得ず彼が助力を求めたのは、「他人のウソを見破れる」とうそぶく不敵な男、通称“悪魔の弁護人”だった―。陰謀と策略だらけの究極の法廷劇、堂々の登場!

 

 心をぴょんぴょんし続けるのは楽しい。でも「こんなもんでしょ」感が満ちている今こそ、 抗うべき明確な敵、超えるべき何かが見えない今こそ、大人になる機会を見失いがちな今こそ、〝かっこいい男〟の活躍に触れて心を震わせたい。もっともっと、かっこいい男が活躍する小説の登場することを強く期待している。