文芸・カルチャー

時代を築いたギャル雑誌の誕生と終焉


『ギャルと「僕ら」の20年史』(長谷川晶一/亜紀書房)

 1995年7月に発売されたギャル雑誌『Cawaii!』。

 ギャルやギャルに憧れる全国の高校生の間に瞬く間に広がり、ファッションからライフスタイルまで多くの影響を与えた。しかし、2009年5月に終焉を迎えてしまう。

 女子高生を取り巻く社会の中心にあったギャル雑誌はなぜ消えたのだろう?

 当時、『Cawaii!』編集部に在籍していた編集者で、現在はノンフィクションライターの長谷川晶一氏が『Cawaii!』の誕生と終焉について書いた著書『ギャルと「僕ら」の20年史』(亜紀書房)からその流れを追ってみよう。

『Cawaii!』創刊時の編集長で現在、主婦の友社代表取締役社長を務める荻野善之氏は本書の中でこう話す。

自分なりに考えていた《メジャー雑誌の条件》っていうものがあって、それを満たすためにはいいモデルを起用すること。そればかり考えていたけれど、全然、適当なモデルが見つからなくて、ふとひらめいたのが“読者モデルを表紙にしよう”というアイディアでした

 そして、雑誌『Ray』の臨時増刊第1号として発売された『Cawaii!』の表紙は、読者モデルのみの水着100人スナップになった。当時はまだ読者モデルが今ほど表に出ていない時代であり、プロのモデルがいない雑誌は異例であった。

 発売した当初は、社内から「カワイイ子が1人も出ていない『Cawaii!』だな……」といった声も聞こえてきたが、読者からの反応はおおむね上々であり、臨時増刊第2号を刊行。その後、月刊化されると次第に売り上げを伸ばす。社内からの批判はあったものの女子高生たちの身近にいる読者モデルを起用したことは結果的に成功し、女子高生の支持を得ていったという。

 本書では『Cawaii!』が徹底的な女子高生へのリサーチによって作りあげられていく様子も描かれる。

 編集部は女子高生に開放されていたため、編集者は遊びに来た子の写真を撮り、アンケートに答えてもらうことができた。飲み物を出して、菓子メーカーや化粧品メーカーからのサンプルを手渡すことにより、編集部と女子高生の距離は近づき彼女たちへの理解も深まっていった。同時に、彼女たちは居場所を見つけることにもなった。

 創刊時に『Cawaii!』編集部にいた直木賞作家の中島京子氏は本書の中で「あの頃、学校や家庭に居場所のない鬱屈したコたちに、『Cawaii!』という雑誌は行き場を与えてあげていたんだと思います」と語る。

 当時の熱狂を物語るように、読者モデルからは歌手やモデルなど、さまざまなスターも誕生、あっという間にギャルの中心的存在の雑誌になった。

 しかし、その栄華も長くは続かない。本書の後半では廃れゆく『Cawaii!』の姿が描かれる。

『Cawaii!』は、高校生だけしか出られない縛りがあった。そのため、高校を卒業した読者は離れてしまう。その読者の受け皿として少し年齢が上のギャルを対象にした『S Cawaii!』を創刊。『S Cawaii!』は現在も続く安定した人気を保つ雑誌となるが、このことにより『Cawaii!』と『S Cawaii!』は読者の取り合いになってしまう。編集長も代わり、誌面もリニューアルを繰り返すが、復活の兆しはなかなか見えてこなかったという。

 また、本書ではケータイやネットの普及により、どこででも待ち合わせできる時代となり編集部が女子高生のたまり場ではなくなったこと。渋谷109が中心だったギャルのファッションビルも、次々と地方に分散して建てられ、渋谷のギャルたちの活気が失われたことなど時代の変化も衰退の原因としてあげられている。

「それまでは『おしゃれなモデルが最新の流行を教えてくれるもの』だった雑誌が、『私たちが今、流行っているものを自慢するもの』へと変貌していく。その過程に登場したのが『Cawaii!』だった」という。

 編集部が雑誌を作り、綺麗なモデルが登場し、どこか遠い存在だった雑誌の世界を『Cawaii!』は変えた。自分たちが編集部と一緒に雑誌を作り、自分たちの仲間たちが発信する。そのことにより、自分たちの居場所を見つける。それはネットが普及した今の時代も、自分たちの文化は自分たちで発信し、誰かに認められることで居場所がほしいという思いは変わらない。

 渋谷のギャルの熱気がなくなったことや、ケータイやネットの普及により『Cawaii!』は消えていった。しかし、今でもギャルは残っている。『S Cawaii!』も存続しているし、他にも生き残っているギャル雑誌はある。ギャルが残り続ける限り、時代を彩った『Cawaii!』という雑誌の熱狂を人々は忘れないだろう。

文=舟崎泉美



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