「今後もズッコケシリーズが色褪せる事はありません」児童文学の金字塔『ズッコケ3人組』シリーズ完結に読者・作り手の抱く想いとは

文芸・カルチャー

2016/3/10

 小柄で短気な八谷良平(ハチベエ)、メガネでやせ型・学者タイプの山中正太郎(ハカセ)、体が大きくてのんびり屋の奥田三吉(モーちゃん)の3人が織り成す、那須正幹の児童書シリーズ『ズッコケ三人組』。児童書のパイオニアと言える同シリーズが、2015年12月1日(火)に発売された『ズッコケ熟年三人組』で遂に完結を迎えた。大ベストシリーズの終幕に、読者それぞれの『ズッコケ』に対する想いが溢れている。

 1978年に『それいけズッコケ三人組』でスタートした『ズッコケ』シリーズ。発売当時の日本には、マンガ的なイラストがついた書籍はまだなく、眉をひそめる大人もいたという。しかし子どもたちは大歓迎。“子どもが自分から進んで読む本”として大ブームを巻き起こした。1冊読み切りのストーリー、年に2度の定期刊行という形式も人気の要因の1つだろう。ちなみに、あとがきに次巻の予告スタイルをとったのも、児童書では『ズッコケ』シリーズが最初だと言われている。子どもが読みたくなる工夫を随所に取り込んだ『ズッコケ』シリーズは、ドラマ化・アニメ化・映画化もされ、誕生から40年近く経った今も読み継がれる、累計2,500万部を超えるシリーズに。モデルエリアとなった広島県の西広島駅には、ハチベエ・ハカセ・モーちゃん三人の像が建てられている。

 現在は活動を終了したが、約45,000人の会員数を誇るファンクラブも存在する。入会方法は、単行本の巻末にある「ズッコケ三人組常識テスト」に答えるというもの。常識テストには、「『とびだせズッコケ事件記者』でモーちゃんがケーキを食べた風月堂とメルシー、あなたはどちらがおいしいと思いますか? またその理由は?」など、全巻読破して回答したくなるようなユニークな問題も。今でもこの解答用紙と切手400円を送ると、ズッコケファンクラブ手帳が送られてくる。

 40年近くの歳月の中、これまで数多のファンレターが全国の子ども達から送られてきたという。驚くのは、ファンレターに記された子ども達のリクエストやアイデアを取り入れて完成した『花のズッコケ児童会長』、『ズッコケ三人組の大運動会』、『脅威のズッコケ大震災』といった作品があること。さらに、「名前を使ってほしい」といったリクエストもあり、『ズッコケ文化祭事件』に登場する童話作家の“新谷敬三”、『ズッコケTV本番中』でモーちゃんたちを厳しく指導した“カメラの亀ちゃん”、大阪で不良に絡まれた三人組を助けた“津田経子”などが生まれたというエピソードも。このように、著者の那須、そして編集部を含めた作り手と読者との距離が近かったというのも、愛され続けてきた要因だろう。

 2004年には、シリーズ50巻目の『ズッコケ三人組の卒業式』でひと区切りを迎えることになった『ズッコケ』シリーズだったが、ファンからの切望を受け、翌年には『ズッコケ中年三人組』シリーズとして復活。同シリーズは、小学校の卒業から28年後の40歳からの三人を描いた物語。

 中年になったハチベエは、継いだ八百屋をコンビニに転換、店長として働いたのち、なんと市議会議員選に出馬している。プライベートでは同級生の安藤圭子と同窓会で再会し、できちゃった結婚。浮気未遂などもあったものの、なんと最終巻ではハチベエの長男に子どもが生まれおじいちゃんに。

ハカセは大学院を修了するも、胸に抱いていた学芸員への夢は諦め、教員になることを選択。私生活では、東京から戻ってきてインテリアコーディネーターをしていた同級生・荒井陽子と44歳で結婚。47歳で子どもに恵まれる。

モーちゃんは大阪で就職するが、勤めていた会社が倒産。妻子とともにミドリ市の母親の家に身を寄せることに。アルバイト生活を余儀なくされるが、ハカセの妻となった陽子の紹介でインテリア会社に再就職。私生活では、9歳年下のチャキチャキした奥さんと結婚する。

 中年、そして熟年を迎え、それぞれに家族ができ、親として成長した新たな三人組を垣間見ることができる。しかし、哀しいまでのリアリティーがあることも確か…。そこには、那須が小学生編から守ってきた姿勢がそのまま貫かれている。子どもの要望は聞くが、おためごかしではない。夢物語のような話はなく、ハチベエが大会社の社長になったり、モーちゃんがタレントになったりしているわけではないし、花山町は駅前商店街がシャッター通りとなりつつある。それを打開しようと、ハチベエは商店街代表として市会議員に立候補し、駅前再開発に関わっていくようになるのだ。ほかにも裁判員制度や、痴漢冤罪事件、子どものいじめ被害、晩婚や高齢出産など、リアルな同時代の社会的な問題も描かれる。それは資料を読みこみ、取材をおこない、題材をよく調べてから作品に取り入れてきたから。『熟年三人組』で描かれる、2014年に発生した広島の土砂災害の被害地取材ももちろん敢行。被害にあった生徒をハカセが探して歩く場面は、教師だった著者の父が広島の原爆投下後、生徒を探しに行った話も重ね合わせている。

 貫かれる姿勢はもちろんリアリティーだけではない。大人になった三人も、『小学生編』と同じく協力して様々な問題に立ち向かっていくのだ。

 そんな『ズッコケ熟年三人組』には、『小学生編』のゲストキャラも再登場する。シリーズ3作に登場した怪盗Xと再対決したり、『ズッコケ中年三人組 age41』では、『ズッコケマル秘大作戦』で三人をとりこにした魔性の女の子・北里真智子、『age45』では『ズッコケ山賊修行中』でくらみ谷から戻ってこなかった堀口青年、『age49』では『ズッコケ心霊学入門』でポルターガイスト現象を起こしていた、後輩の恒川浩介が登場するなど、ファンにとって思い出深い人物たちにまた出会うことができる。

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