性病に罹るリスクよりぬくもりが欲しい。男が男にカラダを売る、「ウリ専」という仕事のリアル【ゲイの”本”音③】

ライフスタイル

2016/3/14


『ウリ専!』(松倉すみ歩/英知出版)

 「ウリ専」という職業のことを知っているだろうか? これは、端的に言うと、ゲイ向けの風俗産業のこと。つまり、男が男にカラダを売る仕事のことだ。そんな職業に従事する男の子たちに迫った一冊がある。『ウリ専!』(松倉すみ歩/英知出版)。本書には7人のボーイたちが登場し、その生き様が徹底的に掘り下げられている。

 始めに登場する テッペイは、パチスロで作った借金を返済するためにウリ専の世界へ足を踏み入れたという。バイセクシュアルでもともと男性とセックスすることに抵抗がなかった彼は、あるきっかけ でウリ専として働くことになった。日給3万円も夢じゃない。こんな甘い言葉に誘われて、気づけば引き返せないところまで来てしまったのだ。しかし持ち前の潔さを発揮し、次々と客をこなしていった。ソフトSMや3Pなど、アブノーマルなことも経験した。しかし、それらを踏まえた上で一番打ちのめされたのは、“研修”と称して店のマネージャーとセックスしたときだったという。「青春が終わったって感じ」という彼の言葉は、それ以上の重みを伴っているような気がしてならない。

 かと思えば、テッペイとは真逆に終始ウリ専そのものを楽しんでいるボーイもいるそうだ。元ゲイ向けAVモデルだったマコトは、店側から懇願されて働くようになった。けれど、それは願ったり叶ったり。なぜなら彼はセックスが大好きなのだ。マコト曰く、「ウリ専は変態がいっぱいで最高」とのこと。要するに天職だったということだろう。

 その他の面々も、ウリ専に従事した理由はさまざま。昼間の仕事で稼げない分を補填するため、作曲家という夢を叶えるコネを作るため、起業に向けた情報収集のため……。どうしてそんな理由で? とも思うかもしれないが、彼らの選択に対して文句を言う権利は、誰にもない。

 なにより、ボーイの多くは、ウリ専で働いていたことを後悔しない。むしろ積極的に肯定しようとするという。「自分が社会でどれほどのものかがダイレクトにわかる」「なんだって、知らないよりも知っていた方がいい」「体を使ってお金を稼ぐのは、サラリーマンも一緒」。彼らのリアルな声は、読み手の常識をガラガラと崩してしまうかもしれない。

 しかし! これが彼らの本音なのか。リアルな意見なのか。本書をファンタジーではないと言い切れるだろうか。正直、そんな疑問は解消されなかった。そこで今回、ウリ専経験者とコンタクトを取り、よりリアルな声を聞いてみた。

 「ウリ専時代の話を聞かせてほしい」というリクエストを快諾してくれたのは、たむさん(20代後半)とチロさん(30代前半)のふたり。両者とも非常に爽やかで、一見そんな過去を持っているようには見えない。

 彼らがどうして「カラダを売る」という道を選んだのか。その理由は、「ぬくもりがほしかったから」だという。中高といじめられっこだったたむさんは「自分を必要としてほしかった」と笑いながら語ってくれた。チロさんも「家にいたくなかった」という理由から、ウリ専へと走ったそうだ。

 しかし、チロさんには目的ができる。それは「専門学校へ行くこと」。その目的ができてからは、さらに精力的に働いた。昼間のバイトをしながら、夜は終電までカラダを売る。そうして稼いだお金は200万円ほどにまでなり、見事専門学校へ入学するという目的を果たしたのだ。

 そんな彼らに「カラダを売ることで危険な目に遭ったことはなかったのか」と尋ねたところ、チロさんは「性病にかかっちゃいました」とあっけらかんと答えてくれた。病名は梅毒。しかし当時はなんの知識もなかったため、病院へも行かなかったという。「お酒を飲むたびに全身が迷彩柄みたいになっちゃって」。

 とても明るく振る舞う彼らからは、後悔の念は感じられない。一応質問してみたが、やはりふたりとも「後悔なんて全然してない」と断言した。専門学校へ行くためという大義名分のもと働いていたチロさんは、「そのおかげでいまがある」と過去を肯定する。それどころか、たむさんに至っては、「変な話、いまでもお金もらってヤレるんだったら普通にヤルと思います。別にもうそこまでお金に困っているわけじゃないからやらないだけで」と、ウリ専自体を特別視していないようだった……。

 インタビュー後、あらためて『ウリ専!』のページをめくってみた。「後悔なんてしていない」。 “9人のボーイたち”は、みなそう口にする。これもまた、「ひとつの生き方」ということなのだろう。カラダを売るも売らないも、すべては自分次第。その道を選択した瞬間から、彼らは前しか見据えていないのだ――。

文=渋谷アシル

【関連記事】
ゲイだからって「女の気持ちがわかる」なんて思わないで!夜の新宿二丁目に響く、ゲイたちの赤裸々発言【ゲイの”本”音①】
クラスに一人の割合? ゲイのぼくらがカミングアウトできない理由【ゲイの”本”音②】