BL好きじゃなくても涙する! 明日、死ぬとしたら、誰に、何を、伝える? 切ない8編のBLアンソロジー

BL

公開日:2016/3/12


『B’s-LOVEYアンソロジー 明日、死ぬ。』(KADOKAWA)

 近年、男同士の恋愛を描いたボーイズラブ、通称“BL”は格段にファンが増え、認知度を高めている。一昔前に比べるとだいぶ一般化したように思うが、しかしそれでもやはり「なんで男同士なの?」「何となく抵抗が……」という人も多いだろう。筆者も抵抗こそないが、普段BLはほとんど読まない。

 そんな中、一冊のBL漫画をおすすめされた。『B’s-LOVEYアンソロジー 明日、死ぬ。』(KADOKAWA)という、アンソロジーコミックだ。普通のBL漫画ならスルーしたかもしれないが、このタイトルは非常に気になる。一体どんなストーリーが詰まっているのだろうか?

 読んでみると、設定は様々。命令により命を絶たなければならなくなったマフィアや、使用期限の決まっている人形、病状が悪化し、明日死んでしまう少年の魂など、合計8つの“明日死ぬ”が収録されている。死ぬのは明日なので当たり前のことなのだが、どの作品のキャラクターも、そこにはまだ生があり、世界があり、想う人がいる。

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 例えば、『リハーサル』。ある夏の日、主人公・優彦の前に、親友・紡が現れた。しかし優彦は驚き、そして困惑する。紡は今、ガンで入院中で、病院のベッドにいるはずなのだ。紡は元気な時と変わらない姿で微笑み、「俺の葬式のリハーサルやんない?」なんて言い出す。自転車で思い出の海へ行き、紡に促されるままリハーサルを始める2人。その中で追悼のスピーチを求められ、優彦はぎこちなく紡への想いを語る。リハーサルを終えると、紡は、「行かないでくれ」と泣く優彦を抱きしめ、「幸せになれ」「元気でね」と言葉を残し、消えてしまう。そして翌日の明け方、紡の死を知らせる電話が鳴る――。

 このリハーサルを行った一日、明日死ぬと分かっていながら、紡は残された一時一時をかみしめるように、優彦との時間を感じている。そして消える直前まで涙は見せず、残されてしまう優彦を気遣って笑っているが、最後の最後でわずかに涙をにじませる。その顔は笑っているが、唇をかみしめているようにも見える。これが、この「紡」という人間が死ぬ、前日。

 通常、物語を読み進めていく中でキャラクターが死に、そこで「死んだ」という事実を突きつけられ、改めてそのキャラクターの物語を思い返す場合が多い。しかし本書は、「明日死ぬ」ということが分かった上で読み進める。これが分かっていると、読み飛ばしていい言葉なんて1つもなかった。そしてこの差は、現実でいう「あの時こうしていれば」に繋がるのだろうと感じた。

 この本のストーリーは全てBLで構成されているが、男女であっても百合であっても、そういった関係でなくても、全ての関係に当てはまるものがある。普段BLを敬遠している人にも、ぜひ読んでみてほしい一冊だ。

文=月乃雫