「畜ペン」? 否、「できるおす」。いま一番忙しい鳥類・つば九郎の腹の中

スポーツ

2016/3/13


『成鳥 つば九郎』(つば九郎/扶桑社)

 昨シーズンのプロ野球・セントラルリーグにて、14年ぶりの優勝を果たした東京ヤクルトスワローズ。歓喜の舞台となったのは、彼らが本拠地とする明治神宮球場でした。場内の熱気が冷めない中、優勝ペナントを持ってグラウンドを一周する選手たち。その列を率いていたのは、選手でも監督でもなく、なんと、チームのマスコットでした。

 彼の名は、つば九郎。その名の通り、球団がモチーフとするツバメを模したキャラクターです。

 スポーツチームのマスコットといえば、選手顔負けの運動神経を活かしたアクションや、礼儀正しいふるまいで、球場を訪れる子どもたちの手本となるような存在、といったイメージが一般的でしょうか。ところが、このつば九郎はひと味違います。基本的には、のんびりマイペース。2本足でぺたぺたと歩く姿や、ぽってりと突き出たお腹の揺れ具合は、激しいアクションとの縁遠さを表しています。大空を飛べるはずの翼はすっかり退化していますが、その代わりに進化した器用な手羽先では、デジカメや筆記具を器用に扱うこと。球団のPRのために出演するイベントでは、好物の焼き鳥をつまむ場面もあったりして…。えっ、共喰い? それは言わないお約束です…!

 彼の魅力のひとつが、怖いものなしの「筆談トーク」。スケッチブックとサインペンで、旬の芸能ネタに食い込んでいったり、ブラックジョークを飛ばしたり。時には球界のスキャンダルや他球団の際どい話題に踏み込んで、周囲から制止を掛けられる一幕も。

 鋭いのは発言だけにとどまらず、初対面の球場スタッフにすら、いたずらを仕掛けることもしばしばです。そんな危なっかしい言動とペンギン風の外見から、ネット界隈では、「畜生ペンギン(畜ペン)」なるあだ名をつけられている、つば九郎。本人(鳥)もそれを自覚しているらしく、時に自身を「はらぐろう」と呼び、自虐ネタとして織り込んでくることすらあるほどで…まったく、手練れというより他ありません。

 しかし、そんな皮肉屋ぶりや傍若無人なふるまいだけでは、彼は今の地位を築くことはできなかったことでしょう。では、何故彼がこんなにも、多くの人を惹きつけているのか。その答えのひとつは、彼の綴る文章にあると言えるでしょう。

 公式ブログ「つば九郎ひと言日記」は、Amebaブログランキング上位の常連。毎日どころか、時には日に何度も更新される同ブログでは、スワローズのチームメイトやスタッフのほか、野球ファンの著名人や他球団の選手など、彼の幅広い人(鳥)脈を垣間見ることができます。また、親交のあった選手の移籍や引退に際しての投稿は、涙無しでは読めない名文として、毎年多くの野球ファンから注目を集めています。選手たちの側で共に戦ってきたからこそ、ファンには知ることのできない苦しみも理解しています。野球を、チームを、心の底から愛しているからこそ、締めるところは締める――彼はそんな「できるおす」でもあるのです。

 つば九郎の文才や人(鳥)柄は、出版関係者からも大きな注目を浴びており、ここ数年は毎年のように、その著書が世に出ています。そんな彼がデビュー20周年の際に出版したのが、この『成鳥 つば九郎』(つば九郎/扶桑社)。収録されているコンテンツは、撮りおろしのグラビアページ(しかも、ほぼフルヌード!)や、大親友である歌舞伎役者・坂東亀三郎氏との歌舞伎座訪問記、チームの垣根を越えた「おとももち」からのお祝いコメントに加え、果ては得意料理(主にツマミ系)のレシピまで、何でもありの一冊に仕上がっています。

 独占インタビューのコーナーでは、普段は「攻め」の姿勢を崩さないつば九郎も、思わずたじろいでしまうような(?)鋭い質問にも答えてくれています。「歴代監督のなかで、特に怖かったのは?」「彼女はいますか?」「好きな女性のタイプは?」等々、単著だからこそ知ることのできる内緒話も満載で、まさに彼の「腹の中」を暴く内容となっています。

 今年でプロ22年目を迎える、スワローズの応援部部鳥・つば九郎。大ベテランの魅力満載の同書を読めば、きっとあなたも、ご本人(鳥)に会いたくなるはず。プロ野球開幕の季節は、もうすぐそこまで迫っています。さあ、今年はあなたも神宮球場へ!

文=神田はるよ