「真夜中のパン屋さん」のいろんな謎が明らかに! どんでん返しの連続にあなたも騙される!

文芸・カルチャー

更新日:2017/11/15

どんでん返しに次ぐどんでん返しで、脳みそと心が揺さぶられまくった『真夜中のパン屋さん 午前4時の共犯者』(大沼紀子/ポプラ文庫)。共犯者ってそういう意味か……!

滝沢秀明出演でドラマ化されたことでも話題の累計120万部突破の人気シリーズ・通称「まよパン」。舞台は、23時から明け方5時まで営業しているパン屋「ブランジェリークレバヤシ」。突然失踪した母の置手紙に従って、女子高生・希実が身を寄せる先として訪ねて行ったのが、腹違いの姉・美和子が営むというそのパン屋さん。ところが美和子はすでに鬼籍。なりゆきで希実は、彼女の夫・暮林と、美和子の弟分でありパン職人の弘基と暮らすことに。実は腹違いの姉というのは嘘だと、希実はおろか暮林も弘基も知っているのですが、それを隠して奇妙な共同生活が始まります。

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望遠鏡で初恋の君を見守り続ける年季の入ったストーカー、美しいニューハーフに、駄目母を支え続けるけなげな少年。一風変わったお客さんたちが持ち込む事件を解決していくうちに希実の心も解け少しずつ変化していく……という本作ですが、巻を追うにつれて少しずつ語られていくのが美和子の過去と、希実とのつながり。そして、希実の母が美和子とかわした秘密の約束なんかも匂わされ、深夜営業の秘密もわかったところで、ついに母帰還! と迎えた4巻ラスト。それらの謎が明かされる『午前4時の共犯者』は、ある意味、シリーズにおけるひとつのクライマックスだったのですが、希実の父親は登場するわ、お家騒動に巻き込まれるわ、ブランジェリークレバヤシまで存続の危機に陥るわ、しかもそれが予想もつかない展開でつながっていくわ、希実と一緒にぐらんぐらんと揺さぶられた上、みんなの人生の重たさに衝撃をうけまくりでしたよ、まじで。それでも希望を持ち続けていられるのは、べたかもしれないけれど、一人じゃないって思えたからだと思うんですよね。

「パンは誰にでも平等な食べ物」というのは美和子の格言ですが、一人で食べてもおいしいけれど、誰かと食べればもっとおいしい。特別なテーブルがなくても、どこでだって幸せを共有できるその食べ物が、少しずつ人の縁をつないでいって、その結果、互いの心がいつのまにか救われている。それは登場人物だけじゃなくて、たぶん、読み手の私たちにも大きな影響を及ぼしているんじゃないかと思います。

作中にこんなセリフがあります。「幸せみたいなのも、慣れれば上手にのみ込めるようになる。一緒に慣れていけばいいんだよ」。
自分の道は自分で切り開いていくしかない。だけど、自分だけの力で自分の心を救ってあげるのは、なかなかむずかしいことだから。誰かと一緒にパンを食べて、救い合って生きていきたい。そんなことを感じた5巻でした。ふわ~。もっかい最初から読み返そう。

文=立花もも