露出狂の傘職人と熱血巡査が猟奇殺人の謎に迫る……! 舞台『浪漫活劇譚 艶漢(アデカン)』の原作って、どんなマンガ?

マンガ

公開日:2016/3/30


『艶漢』(尚月地/新書館)

 ここ最近、マンガの舞台化が盛んだ。二次元の世界を三次元で表現するにあたっては相当な苦労も想像されるが、自分の好きなキャラクターが生身の肉体を持って動き出すのは、マンガ好きからすればうれしいことである。そしてまたひとつ、人気作の舞台がスタートする。3月30日(水)より上演される『浪漫活劇譚 艶漢(アデカン)』である。

 原作『艶漢』(尚月地/新書館)は、緻密に書き込まれた退廃的な世界観と、そこで繰り広げられる猟奇的事件の真相究明が見どころの作品。登場するキャラクターたちはひと癖もふた癖もあり、妙に色っぽい。そして、決してBL作品ではないがそれっぽい描写も多々あり、コアなファンを獲得している。

 主人公となるのは、傘職人・吉原詩郎。着流しをだらしなく纏い下着は未着用、常に肌の露出度80%をキープしているような男だ。彼とコンビを組むのが、それとは正反対の真面目、熱血、堅物系巡査・山田光路郎。このチグハグな2人組が、街で起こる猟奇殺人を次々と解決していく、というのがおおまかなストーリーラインだ。……なんだかこうしてみると、若干ギャグっぽさが漂うが、そのつもりで本作を読むと手痛いしっぺ返しを食らうことになる。

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 なんせ、本筋である猟奇事件の数々はエログロ感満点。事件現場や殺害方法、動機に至るまで、「まじか……」と思わせるほどだ。だからこそ、根強いファンがついているのだが。

 たとえば、詩郎と光路郎が出会う第1話では、街で噂されている「血まみれの花嫁」の謎に迫る。なんでも、結婚式の際に花嫁が通る「花嫁橋」という橋に、夜な夜な狂女が現れるというのだ。詩郎と光路郎はそれぞれのルートから、徐々に事件の真相に近づいていくのだが、やがてたどり着いたそれは想像以上に恐ろしいもの。

 限りなくネタバレを避けようと思うと、もうここではなにも書けなくなってしまうのだが、僕が個人的に驚愕したワンシーンを紹介すると……。

詩郎「赤子を殺して養育費だけを取っていたのですね?」
犯人「そうだよ」
詩郎「これまでの4人も殺したのですか?」
犯人「いいや4人じゃない。34人だ」

 このページを読んだときには、あまりの衝撃にひっくり返りそうになった。34人も赤子を殺害するって、かなりエグいだろ……。

 第1話からフルスイングの展開が待っているので、読み手を飽きさせることはない。それどころか物語が進むにつれて、詩郎の隠された過去が次第に明らかになっていき、猟奇事件と詩郎の過去とが螺旋階段のように入り乱れていくから、睡眠不足に陥ること間違いなしだ。このたびの舞台も、きっと観客をあっと驚かせる内容になっているのだろう。

 ただし、一点だけ心配な点が。それは詩郎のはだけ具合について。前述の通り、彼は露出狂か! というくらい肌を出しているのだが、たびたび股間までも全開にしてしまうのだ。そして光路郎に「しまえ!」と怒られるのが毎度のパターン。本作においてそれは挨拶のようなもので、これを抜きに語ることはできないほど。果たして、舞台ではそのやり取りまでも忠実に再現されているのか。原作ファンとしては、そこもかなり重要な問題である。

文=五十嵐 大