精神科医・斎藤環 「ハルヒ」世界観は作者の震災経験と分析

マンガ・アニメ

2011/9/5

5月25日に発売された最新刊『涼宮ハルヒの驚愕』が大ヒットを記録中の涼宮ハルヒシリーズ。精神科医でサブカルチャー評論でも活躍する斎藤環さんに、その魅力を聞いた。   「『ハルヒ』がここまでヒットしたのは、やはりキャラクターの強さにあると思います」と斎藤さん。なかでも、小説内の語り手であり、男性主人公のキョンをこう分析する。
  
「キョンは非常に空虚な存在ですね。他のSOS団員と違って特殊能力がなくて身長も低い。劣等感を持たずに自分を重ねられるキャラ。つまり、読者にとっては自分が座れる席がぽっかり空いている状態で、男性読者が同一化するには都合のいいポジションです」    
  
また、斎藤さんはライトノベルにおいて、涼宮ハルヒシリーズのように、多重世界を描く傾向がいよいよ高まっていると語る。
  
「(作者の)谷川さんが多重世界を描くのは、阪神淡路大震災で被災した経験があるからだと思います。大きなカタストロフは一次的に人間の創造力を抑圧するのですが、関東大震災後に新感覚派が出てきたように、東日本大震災を経験して、新しい創造の形が生まれてくる可能性があります。『驚愕』が予約だけで50万部を超えたのは、明るい話や絵空事が、今、求められているからかもしれませんね」
  
涼宮ハルヒシリーズのヒットは、起こるべくして起きた社会現象なのかもしれない。   
  
(ダ・ヴィンチ7月号 涼宮ハルヒ現象を追う!より)