奇跡のコラボレーション『探偵の鑑定』(I・ll)刊行記念 松岡圭祐スペシャル

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2016/4/6

「万能鑑定士Q」と「探偵の探偵」。絶大な人気を誇る2大シリーズをクロスオーバーさせ、同時に完結させた松岡圭祐『探偵の鑑定』。その魅力と美しきヒロインたちの秘密に迫る!

取材・文=朝宮運河 写真=臼田尚史
イラスト=清原 紘(『水鏡推理』以外)、紺野真弓(『水鏡推理』)

●松岡圭祐インタビュー
「北風が太陽の世界を信じられるかがテーマです」

松岡圭祐
まつおか・けいすけ●1968年、愛知県生まれ。97年に『催眠』で作家デビュー。代表作「万能鑑定士Q」シリーズと「千里眼」シリーズを合わせると累計1000万部を優に超える人気作家。他の作品に『ジェームズ・ボンドは来ない』『ミッキーマウスの憂鬱』など多数。

 なんと斬新で野心的な試みなのだろう!
 ベストセラーを連発するミステリー作家・松岡圭祐さんの最新刊『探偵の鑑定』(I・ll)は、「万能鑑定士Q」「探偵の探偵」という2つの人気シリーズのクロスオーバー作品にして、両者の完結編にあたるスペシャルな一冊だ。執筆の経緯について松岡さんはこう話す。

「編集者と打ち合わせをした際に、『2つのシリーズをクロスオーバーさせた“探偵の鑑定”みたいな作品は書きませんよ』とあらかじめ釘を刺したんです。それを聞いた相手が『いいですね!』と乗り気になってしまった(笑)。クロスオーバーといっても、ただ2人の主人公が一つの作品に登場するだけでは意味がありません。やるからにはテーマと必然性のあるものにしたいと思いました」

“人の死なない”世界で活躍してきた「万能鑑定士Q」の凜田莉子と、ハードボイルドな世界に生きる「探偵の探偵」の紗崎玲奈。2人のヒロインが共演する『探偵の鑑定』を著者はある童話に喩えた。

「この作品は自分なりの『北風と太陽』なんです。これまで北風の世界で生きてきた玲奈が、太陽の世界に生きる莉子と出会ったことで変わってゆく。北風は太陽を信じられるのか、というテーマが浮んだことで、作品の方向性が定まりました」

 リアリティ溢れる描写、予想を裏切るストーリーテリング、手に汗握るアクション。1ページ目からラストまで、ハイテンションを維持しながら進んでゆく物語は、読者をひきつけてやまない。

「出版不況で小説が売れないと言われていますが、そうは思わない。これまでにない新しい物語を生み出し、時代に沿った形で提供していけば、読者はちゃんと受け止めてくれるはずです。そのためには工夫や取材を惜しみません」

 気になるのは今後の展開だ。2つの人気シリーズを完結させた松岡さんが向かう先は。

「しばらくは新しいシリーズ『水鏡推理』に集中し、数カ月に1冊のペースで刊行するつもりです。玲奈の物語はこれで完結ですが、『万能鑑定士Q』はもう1作、ファンに向けてフィナーレにあたる作品を書こうと考えています。しばらく女性主人公の作品が続いたので、久々に男性が活躍するミステリーも書いてみたいですね」

 

2+2ヒロイン4人が集結!奇跡のコラボレーション
松岡圭祐の2大シリーズのダブル完結編!

 心優しき美人鑑定士・凜田莉子の胸のすくような活躍を描いた「万能鑑定士Q」。笑顔を見せないクールな女探偵・紗崎玲奈が、欲にまみれた悪徳探偵たちと戦いを繰り広げる「探偵の探偵」。

 両シリーズの最新作にして完結編にあたる『探偵の鑑定』(I・ll)は、これまで交わることがなかった世界をクロスオーバーさせた挑戦的な作品だ。一見、水と油のようにも思えるカラーの異なるシリーズを、著者は巧みに重ね合わせ、どちらのファンにも満足のいく物語に仕立て上げた。

 首都圏で富裕層の男性ばかりをターゲットにした連続詐欺事件が発生。被害者男性からそれぞれ数百万円もの現金を騙し取って逃亡中の女は、犯行現場に裏側をくり抜いた高級バッグ・バーキンを残していた。

 証拠品のバッグの鑑定を請け負ったのは、東京・飯田橋に万能鑑定士Qという店を構える鑑定士・凜田莉子。莉子がこれまで数々の難事件を解決に導いてきたことを知った都内の探偵たちは、彼女が鑑定士の看板を隠れみのに探偵業を行っているのではないかと疑い、調査会社スマ・リサーチに調査を依頼する。

 さっそく監視に乗り出した“探偵の探偵”紗崎玲奈だったが、莉子の生活スタイルは一般人そのもの。とてもプロの探偵には思えない。そんな中、玲奈が張り込んでいる目の前で、拳銃を持った偽警官に莉子が襲撃されてしまう。実は莉子のもとに持ち込まれたバーキンには、ある秘密が隠されていた。身の危険を感じた莉子は、玲奈と行動をともにするようになるが……。

「万能鑑定士Q」といえば“面白くて知恵がつく 人の死なないミステリ”のキャッチコピーで読者に支持されてきた作品だ。ところが『探偵の鑑定』ではこれまでの平和なムードから一転、「探偵の探偵」寄りのハードな世界へとシフトしている。暴力を目の当たりにし、ショックを受ける莉子。一方、莉子の生きてきた世界に触れたことで、玲奈の内面にも少しずつ変化が生じてゆく。クロスオーバー作品ならではの劇的な展開と言えるだろう。

 また本作には「特等添乗員α」シリーズの浅倉絢奈、「水鏡推理」シリーズの水鏡瑞希も登場。絢奈と瑞希がどう関わるのかは読んでのお楽しみだが、しっかりと事件解決に貢献しているのが嬉しい。異なる才能を備えた4人のヒロインが豪華共演を果たす、いわば松岡圭祐版『アベンジャーズ』なのである。他にも、莉子と恋人・小笠原悠斗との仲に決着がついたり、スマ・リサーチの須磨康臣の知られざる過去が明かされたりと、両シリーズのファンには見のがせない内容が満載だ。

 凜田莉子に降りかかったシリーズ最大の危機。その先にあるのは光か闇か。莉子と玲奈を待ち受ける運命とは? 衝撃の結末をしかと見届けてほしい。

 

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