人気マンガ『JIN-仁-』、ドラえもんとの共通点とは?
公開日:2011/9/5
では、なぜタイムスリップ・コミックが愛され続けているのだろうか?
タイムスリップ・コミックには、普遍のテーマがある。タイムスリップした不安、現代へ戻れるかのスリル、現代とのギャップから生まれるギャグ、そして時を越えた恋愛。
しかし、これらは、作品の入り口に過ぎない。
タイムスリップ・コミックの真のおもしろさは、その先、主人公がたどり着いた時代のディテールの素晴らしさにあるのではないだろうか。その世界観の質が、作品それぞれの新しさと充実度を決定しているとすら言える。
『JIN-仁-』には、鮮明な江戸の日常がある。江戸っ子や武家の暮らし、歌舞伎や大相撲などの町人文化。 世界が完璧に構築されているからこそ、その中でキャラクターは生き生きと動くことができ、読者は、南方仁先生(『JIN-仁-』)の誠実な熱意に心打たれる。
そうなって初めて、先に挙げたタイムスリップ・コミックの普遍的なテーマも、感動とともに読者の胸に迫る。主人公はその時代でどう生き、何を愛するのか? その時代と現代、最後にどちらを選ぶのか?
高度な絵の描写力、キャラクターの創造性、豊かなストーリーテリング、その3要素が揃ってタイムスリップ・コミックは名作たり得る。同時にその3要素は、マンガのおもしろさの根幹を成すものでもある。
マンガというフィクションの最高峰の魅力、それがタイムスリップ・コミックには満ち溢れているのだ。
(ダ・ヴィンチ7月号 コミックダ・ヴィンチより)