【女性の防災】入浴中に大地震が起こったら裸でも逃げるべき? もしもの時、女性に必要なモノ

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更新日:2020/9/1


『クロワッサン特別編集 女性目線で徹底的に考えた 防災BOOK』(マガジンハウス)

 短期留学をしていた時に、シャワーを浴びていたら寄宿舎の非常ベルが鳴り響いた。しょっちゅう誤作動を起こしていたので「またか」と、その時は気にせず髪と体を洗い流した。しかしこれが本当の有事だったら、自分はまず何をするべきなのか。泡だらけでもタオルを巻いて避難したほうがいいのか、それと服を着てからでもよいのか。とくに女性の場合「裸でも逃げるべき」と言われても、あとから恥ずかしさがじわじわ襲ってくることを考えると、どうしてもちゅうちょしてしまうのではないだろうか。うーん、わからない……。

 そんな答えがよくわからない、「女性の防災」について徹底的に考えた『クロワッサン特別編集 女性目線で徹底的に考えた 防災BOOK』(マガジンハウス)が、3月10日に発売された。

 第一部では整理収納アドバイザーの澁川真希さんと、資生堂ジャパン美容統括部長の松田佳重子さんの対談を掲載。ともに3.11に宮城県仙台市にいた経験から「女性同士は助け合えるんです」と、女性ならではの必須アイテムについて談議している。

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 たとえばハンドクリームや白色ワセリン。避難所では水が貴重で手が洗えず、消毒剤でまかなうところもあった。ずっと使っていると手が荒れて湿疹を起こしたり、出血したりしてしまう。ハンドクリームやワセリンがあれば保護膜になって、消毒剤の刺激を緩和できるそうだ。また避難所の食事は当初はおにぎりなど炭水化物が中心なので、「野菜が食べられなくてビタミン不足になるから、爪も髪も唇もガサガサになってしまう。爪切りは必須アイテム」であることにも触れている。

 避難袋に生理用品を準備しておくのはもはや常識だけど、「デリケートゾーンはアルコール入りのウェットティッシュで拭くとヒリヒリして痛い」「アルコールフリーのものや、赤ちゃん用を普段から用意しておいたほうがいい」「フード付きパーカーが顔も髪も隠せて、首筋も暖かいから重宝したという人が多かった」といった震災経験者のリアルな声も拾っていて、「これは準備しなきゃ!」という気にさせられる。実際私は、ノンアルコールのウェットティッシュを買いに走ったほどだ。

 第二部では自宅や外出先で大地震が起きた際、最初にどう行動するかのシミュレーションなどを徹底紹介。入浴中に地震が起きたら、「洗面器やお風呂のふたなどを頭にかぶり、衣類やバスタオルをはおって 、いつでも逃げられるように玄関に行き、ドアを開けます。揺れが大きいときは、衣類を身に着ける余裕はありません。一時の恥よりも、まず命を守ることを最優先に考えて行動」が正解としている。確かに災害救援ボランティアをしている知人も、「命を救うのが最優先で“女性だから”といったことは考えている間などない。救出に必要なら服を切り裂くこともあるし、身元を確認するために鞄の中身を探ることもある」と言っていたっけ……。確かにその通りだけど、だったらなおさらプライドも守りたいなら 、自分でなんとかするしかないのかも(こんな時には第一部で必需品にあげている、大判ストールが役に立ちそう)。

 また第二部では子供や高齢者、ペットの避難をサポートする方法も紹介している。がれきや人ごみではベビーカーは使えないし、両手に荷物が持てるから「普段から抱っこ紐を用意」、同様に車いすも難しいから、1人で歩けない人のためには1万円程度で買える「おんぶ帯を検討」、でも犬は抱っこには限界があるから、「犬用の靴下か赤ちゃん用の靴下をはかせてガムテープで留めておく」と、非常にわかりやすい。ちなみに「保育園落ちた日本死ね!!!」のママたちが国会に行った際、2万円近い抱っこ紐を使っていたことで「贅沢品を使うなら共働きするな」とネットの一部で騒がれていたが、こういったことからも値が張ってもしっかりした抱っこ紐が必要なのだ。騒いでいた人はこれを機に、現実を勉強してほしい。

 そして第三部ではキッチン収納や廊下、リビングなどにおける、日ごろからできる防災片づけ について触れている。確かにグラリときたら、ガラス食器も包丁も立派な凶器になってしまう。レモンジーナのペットボトルやキャラグッズが生活感満点な読者宅の「お片付け ビフォーアフター」を通して、愛用のモノに命を奪われずに済む方法を学ぶことができる。

 ちなみにこの本には、いわゆる記事広告(取材記事っぽい体裁の、タイアップ広告)が一切ない。企業などに頼まれたのではなく、必要だから作っているのだというクロワッサンの本気度が伝わってくる。

 松田さんが対談で語っている「自分に必要なものを持っている人は、同年代の女性の悩みを助けることができる」という言葉に象徴されるように、この本にあるものを備えることで自分だけではなく、ほかの女性の命とプライドを守ることができるのかもしれない。

文=玖保樹 鈴