スティーヴン・キング絶賛のSFスリラー日本上陸! 15歳になった者から消えていく「奇妙な世界」

文芸・カルチャー

更新日:2017/11/15


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『GONE(ハーパーBOOKS)』(マイケル・グラント:著、片桐恵理子:訳/ハーパーコリンズ・ジャパン)

先生が、消えた――いきなり謎の一行からスタートする 『GONE(ハーパーBOOKS)』(マイケル・グラント:著、片桐恵理子:訳/ハーパーコリンズ・ジャパン)は、目の前の世界から突然「大人」だけが姿を消し、子どもたちだけが取り残された世界でサバイバルするという「奇妙な世界」を描いたSFスリラーだ。

何か事件があったわけでもなく、何の前触れもなく、ありきたりの日常に突如起こった不可思議な現象。なにしろ目の前の世界から15歳以上の大人がいきなりパッと消えてしまったのだ。「これは神様の仕業だ。だって、ほかに説明のしようがないだろう? 大人だけみんな消しちまうなんて誰にもできやしないんだから」と、動揺しながらギリギリ14歳だった主人公のサムや仲間たちが周囲を見渡せば、学校には先生がいなくなり、町のお店からは店員が消え、動く車もゼロ、もちろん両親も年上の兄弟もいなくなっていた。おまけにテレビもネットも電話もつながらない。明るかった普通の町は、突如「薄気味悪いゴーストタウン」になっていたのだ。

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残されたのは0歳児の赤ちゃんから15歳未満の子どもばかり…ということはサムたちも15歳になったら消えてしまうのかもしれない。ホントにそんなことが起きるのか? この状況はどうにも変えられないのか? 叫び出しそうな恐怖と出口のみえない絶望を抱えながら、パニックや疑心、無秩序を乗り越えて、ディストピアの子どもたちは生き抜くための闘いに挑んでいく。

「子どもたちだけで生き残る」という物語は、さながら『十五少年漂流記』や『ドラゴンヘッド』など、昔から人気が高い冒険小説の定番・サバイバル小説。そうした醍醐味はもちろんのこと、「この世界はどうなってるのか」「なぜ15歳で消えるのか」と、ちりばめられた謎に子どもたちが果敢に挑むミステリーとしての面白さも抜群。実は各章のタイトルがサムが15歳の誕生日を迎えるまでに残された時間になっており、ヒリヒリとした切迫感が全編にみなぎっている。

さらに15歳の誕生日が目前に迫ったある少年を実験台に「消える現象」の観察に挑むシーンや、誰がリーダーになるか過激化する派閥争いなど、恐怖に駆られた子どもたちの残酷度はゾワゾワする生々しさ。極限状態の中で「生きる」ということのリアリティを伝えてくれる…と、まるでハリウッド映画のようなスケールの大きな物語なのだ。
実際、あのスティーヴン・キングも「興奮と緊張感に満ちていて、ページをめくる手が止まらない。夢中になれる、実にすばらしい作品だ」と絶賛しているというのだから間違いないだろう。

ちなみに本国では2008年の発売以来、一躍、若者を中心に大人気となり、映像化の話も出ていたりするとか。なお今回の『GONE』はあくまで序章であり、本国ではシリーズ完結済みとのことで、日本の読者のお楽しみはまさにこれからとなる。本作で山場は一旦完結を迎えるもののラストにはなにやら不穏な動きもあり、早くも続巻が気になって仕方がない。

なお、日本版のカバーイラストは2015年本屋大賞に選ばれた上橋菜穂子の『鹿の王』(KADOKAWA)を手がけた影山徹が担当。大迫力のパノラマイラストで、空想に頼るしかない物語世界を鮮やかに立体化してくれる。また本文内にあるMAPと照合しながら楽しめば、面白さも倍増するはずだ。

サバイバル、絶望や恐怖との闘い、仲間たちとの絆、そしてミステリアスな謎…冒険小説にとどまらない魅力がたっぷりつまった大型長編は、久しぶりに「別世界にハマる」興奮を届けてくれるに違いない。

文=荒井理恵