同性婚はなぜ認められないの? ゲイの弁護士が分かりやすく解説する同性愛者のリアル

社会

2016/4/11


『同性婚 私たち弁護士夫夫(ふうふ)です』(南和行/祥伝社)

「女性にとって最も大切なことは子供を2人以上産むこと」――大阪市立中学校校長の発言が物議を醸したことは記憶に新しい。この校長の発言、問題点はいろいろあるが、忘れてはならないのが、同性愛者の存在を一切無視していること。女×女または男×男、たとえお互いの血のつながった子供を作ることは出来なくても、同性同士のカップルが子どもの親になるケースだってあるのに、それが全く想定されていない。「結婚=異性愛者のもの」という考えが当たり前の世界の裏で、心ない言葉に傷つけられ、当たり前の権利が認められないことで苦しんでいる人たちがいる。

同性婚 私たち弁護士夫夫(ふうふ)です』(南和行/祥伝社)の著者で弁護士の南和行さんは、ゲイの同性愛者であることを公言し、同性パートナーであり同じく弁護士の吉田昌史さんと共に大阪で法律事務所を開いている。二人は結婚式も挙げ、一緒に暮らしている。だが、たとえ自分たちで「私たち結婚しています」と言っても、法律上はまったくの他人だ。相続権や日常家事代理権など、異性カップルであれば当たり前のように認められる権利でも同性カップル間には適用されない。「二人の間に愛さえあれば、法律の壁なんて」というわけにはいかないのだ。実際、南さんたちの法律事務所には、同性愛者の相談者が全国からやって来る。

「同性愛者からすれば、異性愛者が異性を好きになるのと同じことなのに、なぜ自分たちには異性カップルのような権利が認められないのか」という問いから始まり、同性婚を論じたのが本書だ。前半部分では、親兄弟との関係、学校や職場でのふるまい、パートナーとの出会いなど、南さん自身の同性愛者として経験談を織り交ぜつつ、相続や遺言、住宅ローンや生命保険の受け取り、DVやリベンジポルノまで、同性カップルが直面する法律問題を紹介する。取り上げる問題は身近なものばかりで、かつ分かりやすく説明されているので、いかに“異性愛者の当たり前”が同性愛者に認められていないかがリアルに伝わってくる。

「同性婚がなぜ法律で認められないか」という問いは最終的に、国の最高法規である憲法が同性婚をどのように想定しているかの解釈へとつながる。憲法解釈といってもけっしてコムズカシイことが書いてあるわけでない。同性婚にとどまらず、結婚とは、家族とは、一体何なのか、私たちが今一度立ちどまって考える機会をくれる。

 全体を通して強く伝わるのは、「個人個人が性の多様性について理解を深めることが大切」であること。「たった一人のマイノリティであっても、ほかの人と同じような生活の便益を享受できることこそが法の下の平等であるはず」との著者の強い思いが心に刺さる。冒頭で紹介した校長の発言も、多様な性に対する知識と理解が乏しいがゆえに発せられたのだろう。願わくは、そのような人にこそ、本書を手にとってもらいたいものだ。

 同性婚について賛成/反対のどちらの立場に立つとしても、本書を読んで、当事者の生の声を聞き、具体的な問題を知ってほしい。

文=林亮子