巨乳でセクシーな“夢の神様”と他人の夢をぶち壊したい“根暗系男子”による究極の人生選択ファンタジー

マンガ

公開日:2016/4/11


『ユメクイユメミ』(あずまたま/小学館クリエイティブ)

 4月。サクラサク、この季節。進学や就職などで、環境がガラッと変わる人も多いだろう。中には、新天地での生活に夢や希望を抱いている人もいるはず。夢を目指して、キラキラした人生を歩む。そこに広がるのは、まばゆいほど輝ける未来だ。でも、もしも未来になんの期待もできないとしたら……? 夢を持つ人たちをうらやましいと思うだろうか。それとも――。

 連載型新作マンガ配信サービス「GANMA!」で連載中の『ユメクイ』が単行本化され、4月11日(月)に『ユメクイユメミ』(あずまたま/小学館クリエイティブ)第1巻が発売された。本作は、文字通り「夢」をテーマにした作品だ。

 主人公は、夢や目標を持たない大学生・希望天夢(のぞみ・てんむ)。同級生たちを「うるさい」「くだらない」と見下し、ネットでアニメの悪口を書き込むことを日課としている、根暗な男子だ。そんな彼の元に現れたのが、夢を食べる神様のユメミ。彼女は「夢の選択に悩む人々の前に現れ、その選択を見届け、捨て去った夢を食べる」という。

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 ……と、ここまで読んで、本作を「天夢が人生に前向きになっていくサクセスストーリー」だと思った人は、ちょっと待って。前述の通り、天夢には肝心の夢や目標がない。それどころか彼は、そういったものに前向きになっている人たちを見下している。そこで彼が取った選択は、ユメミに人々の夢を食わせること。その狙いはただひとつ。他人の未来を壊すためだ。

 天夢にとって、夢や未来なんて煩わしいものでしかない。それを軽々しく口にする者や、悩んでいる者も同様。それならば、いっそ自分がすべてをぶち壊してやろう……。こうして、天夢とユメミの、「夢に悩む者探し」はスタートするのだ。

 彼らの前には、自分の将来に悩んでいる者が次々と登場する。家業を継ぐか、ダンサーを目指すか迷う幼なじみ・秋月なじむ。周囲の勧めで受けた会社への内定を受けるかどうか決めかねている真締元(まじめ・はじめ)。ユメミの存在により、彼らは自身の将来と真剣に向き合うことになる。その姿を目にした時、天夢自身はなにを思うのか――。

 ちなみに、夢という深いものをテーマにした本作だが、決して説教じみた内容ではない。むしろ、絵柄を見る限りは真逆を突っ走っている。なにせ、神様であるユメミは完全なる萌えキャラ。しかも、夢を食べるシーンは、若干エロい……。そのギャップもまた、本作の見どころと言えそうだ。

 昔、宇多田ヒカルが「みんなの願いが同時に叶うなんてありえない」と歌っていた。残酷なようだが、それは紛れもない真実だろう。でも、だからこそ夢を追いかける人の姿は美しく、そして儚いのかもしれない。はたして、夢がない大学生と神様のコンビは夢見る人たちと関わることで、いったいなにを見つけ出すのだろうか。

文=五十嵐 大

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