第3次人工知能ブーム到来! 身近なExcelを使ってその力を体感できる1冊

科学

公開日:2016/4/13


『はじめての人工知能 Excelで体験しながら学ぶAI』(淺井 登/翔泳社)

 昨今、情報科学分野を中心に「第3次人工知能ブーム」が叫ばれている。言葉自体が使われたのは、1956年にアメリカのダートマスで行われた科学者たちの会議によるものからといわれるが、以来、60年にわたり人類はあくなき研究を続けてきた。

 何らかの分野において、人間の限界を超える役割を求められる人工知能。科学者たちの手を離れ商用化に結びついたのが1980年代。1990年代から2000年代にかけてはインターネットの普及にともない、データ解析分野での汎用も進んだ。そして現代、Googleや自動車メーカーによる自動運転技術やロボットの実用化に併せて、人工知能への期待がふくらみつつあり、研究・開発もさかんになっている。

 では、身近にふれることはできないだろうか。一般的な人工知能のイメージをいえば、SFの世界で登場するアンドロイドのような、壮大なものを浮かべてしまうかもしれない。しかしじつは、身近なPCを使って人工知能の力を体感することができる。それを紹介する1冊が『はじめての人工知能 Excelで体験しながら学ぶAI』(翔泳社)である。

 人工知能の定義や歴史を、科学にあまり詳しくない一般向けにも優しく解説してくれる本。加えて、本書に記載されたアドレスからダウンロード可能なExcelファイルから人工知能の働きをじかに体験できる。

ちょっと熱っぽいかも……。人工知能に病気の可能性を予測してもらう

 本書P175にあるのは、人工知能に自分の病気を聞いてみようというプログラムである。既定ファイルにあるのは、例えば「熱がありますか?」「腹痛がありますか?」というネット上でもよくみかけるような21問の設問で、ユーザーは「はい」「いいえ」「わからない」の3択で答えていく仕組み。すべての設問に回答すると、「インフルエンザ」「肺炎」などの10項目から、それぞれどの病気にかかっているかの可能性を数値で示してくれる。

 プログラムの解説も付け加えられた本書だが、このファイルで使われているのは「aならばbである」と、物事の因果関係を表現する「プロダクションルール」と呼ばれるものである。先に挙げた項目の例だと「熱はある。しかし、腹痛はない」といった状況に適した選択肢をユーザーが選べば、それぞれの回答を複合的に人工知能が分析してくれるという仕組みだ。

 近ごろは、iPhoneの「Siri」のような音声入力システムもある。将来的に、それらとの連動が身近になれば、重病を発見する手助けにもなりそうだ。

相手より大きい数字を出すだけ。簡単なゲームでプログラムに挑戦!

 人工知能により、人間のお株が奪われるという話も尽きない。例えば、今年3月15日に、Googleの開発したソフトが囲碁の有段者に勝ち越したことも話題を集めた。

 勝負やゲームの世界ではこれまでも人工知能との戦いが繰り広げられてきたが、本書のP153には簡単なカードゲームも収録されている。ルールは単純で、プログラム上で考えるべきなのはトランプと同じ13枚のカードだ。プログラムとユーザーは1回戦ごとに任意のカードを出して、より大きい数字を出した方が両者の差となる数を得点として得られる。たがいに13枚をすべて出し切ったところで、得点の大きい方が勝者となる。

 ゲームを開始する前に、ユーザーはプログラムの戦略を5段階から選べる。レベルごとに手強くなるのだが、どのカードを出すかはユーザーにゆだねられているため、プログラムとの駆け引きを楽しめる。ユーザーの手番を受けたプログラムは、たくさんの枝分かれしたデータからさまざまな手を瞬時に判断する。

 例えば、1手先を読み単純に最大の数字で勝とうとする、2手先を考えつつ相手の出した手札をふまえた手を出すといった具合いに、レベルごとの戦略もバラバラだ。そのため、1つひとつのレベルで対戦してみるのもおもしろい。

 この他にも人工知能の一端を、様々なプログラムから味わえる本書。じつはふだん、なにげなく使う家電や身近なものにも人工知能は活かされている。意識を向けながら、何ができるのかを身をもって体感してみることで、現代の技術を新たな視点から捉えるきっかけにも繋がるかもしれない。

文=カネコシュウヘイ