0~14歳の4人に1人がスギ花粉症。子どもたちを花粉症から救う最新療法とは?

出産・子育て

公開日:2016/4/27


『子どもの花粉症・アレルギー性鼻炎を治す本(健康ライブラリーイラスト版)』(永倉仁史/講談社)

 スギ花粉・ヒノキ花粉こそ収まりつつあるが、イネ花粉はこれからが最盛期であるし、それが落ち着くとブタクサやヨモギ…と通年で花粉症の人を苦しめる花粉。

 花粉症者は年々増え続けている。この中には、子どもも含まれる。『子どもの花粉症・アレルギー性鼻炎を治す本(健康ライブラリーイラスト版)』(永倉仁史/講談社)によると、0~14歳のじつに4人に1人がスギ花粉症。低年齢児がクリニックで受診することも珍しくない。

 一昔前は、子どもの花粉症はあまり見なかった。近年の子どもは、過敏になったのだろうか。

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 本書によると、変わったのは子どもではなく、環境だという。花粉の飛散量は、20年間で約2倍になった。乳幼児期から大量の花粉にさらされると、発症年齢の低年齢化が進むという。スギ花粉症の子どもの割合は、20年間で10倍以上にも増大している。

 花粉症はアレルギー疾患の一つだ。同じくアレルギー疾患であるハウスダストアレルギー、食物アレルギー、ぜんそく、アレルギー性鼻炎、アトピー性皮膚炎などを合併する子どもも少なくない。また、「アレルギーマーチ」といわれるように、アレルギー疾患は子どもの成長とともに新たなアレルギー症状を引き起こす傾向がある。さらには、基本的に治らない。花粉症になった低年齢児は、将来にわたって大きなリスクを背負うことになる。

 そんな花粉症には、従来、2つの対処法が組み合わされてきた。一つは、「花粉対策をする」こと。外出時はマスクや帽子を装着する、大量飛散日は外出を控える、衣服は部屋干しをする、などが挙げられる。花粉シーズンにはメディアなどで多くの方法が紹介されることもあり、生活に取り込んでいる人もいるだろう。そして、もう一つは、「薬物療法で症状をやわらげる」こと。花粉シーズンは点鼻薬、点眼薬、内服薬がないと乗りきれない、という人がいるかもしれない。

 しかし、花粉対策を入念に行ったからといって花粉をゼロにはできないし、薬物療法で症状を完全に抑えることもできない。そこで、注目されているのが、根本的な治療法として期待される「免疫療法」だ。花粉症の原因であるアレルゲン。通常、人間の免疫はアレルゲンを敵だと判断し、攻撃して排除しようとする。敵が花粉の場合、その攻撃とは鼻水だったりくしゃみだったりするのだが、過剰な攻撃をし続けて抑制が利かなくなってしまうことがある。これが花粉症だ。しかし、免疫療法では、免疫に「放っておいても大丈夫だから攻撃しなくてよい」と教え込んでいく。

 これまでの免疫療法は、月に1回程度、皮下組織にアレルゲンを含んだ薬剤を注射で注入する「皮下免疫療法」が取られていた。しかし、注射のたびに通院が必要なこと、痛みや腫れが起こりやすいことなどから、実施例は少なかった。

 そこで、日本では2014年に新しい治療法として「舌下免疫療法」が認可された。海外ではすでに普及しているこの方法は、文字通り薬剤を口に含み、飲み込む方法。痛みが伴わない、自宅で行えるというメリットがある。現在は、12歳以上にならないと受けられない。しかし、数年後には5歳から受けられるようになる見込みであることから、花粉症に苦しむ低年齢児を救う最新療法と目されている。

 本書によると、「花粉症を治す米」の研究・開発が進められており、将来的には「食べる」ことで免疫療法が受けられる可能性があるという。早期の実用化を願うばかりだ。

文=ルートつつみ