“ちゃんと肌色”要素もギッシリ。イケメン息子と過保護な養父の禁断愛!

BL

公開日:2016/4/25


『未婚の父と暮らしてます』(高岡七六/コアマガジン)

 ネグレクトされた少年を保護した義理の父。その父へ強い思いを抱く男子高校生。禁断の関係はどこへ向かうのか…。

 BLといえばタブーの多い世界。このあらすじだけでも背徳感たっぷりだ。だが、この背徳感がときに重すぎると感じることもあるだろう。マンガは娯楽。日常のひとときをほっこり癒やして欲しい。しかもちょっとエッチな方向に。そんなニーズを持っているBLラバーに応える作品を紹介したい。

 『未婚の父と暮らしてます』(高岡七六/コアマガジン)は、冒頭で説明したように、設定だけで見るとタブー感満載だ。だが、絶妙な軽妙さによって、重すぎることなく、けれども“きちんとH”でもあって、そんなバランスの取れた作品だ。

advertisement

 読後感を爽やかにしてくれるのが登場人物だ。義理の父こと一義は“超”が付く天然なキャラだ。よこしまな思いを抱く男子高校生・秋人が、父の日に時計という比較的高価なプレゼントを贈っただけでも涙ぐんで喜んでしまうキャラ設定。「なぜこんな高価なプレゼントを?」っとツッコむような野暮なマネはしない。

男子高校生・秋人が義理の父に苦し紛れにいったひと言が、重要な転換点となる

 この天然が最大級に発揮されるのが、秋人が一義の寝姿を見ながら、一人“奮起”しているシーン。パジャマをはだけた姿に、股間をまさぐっていれば、当然「オカズ」にされていると気がつくだろう。
 だがこの作者のすごいところは、秋人に次のように言わせたことだ。

「オ◯ニーのやり方を教えてくれない?」

男親がいないことを逆手に取り、正式な“やり方”の教えを請う、という方向へ持ち込んだのだ。思いもよらぬ展開!

 ありがちなセオリーから考えると、次のように考えられるだろう。
「オナニーばれる」→「何しているの?」→「実は僕、あなたが好きなんだ」→「両思い成就」。
 それまでのほのぼのとしたBL世界が、ここに来て予想外の展開を向かえたことで、読み手にも一気に緊張感が走る。「なに暴走してんだ?」と一気に引きつけられる。
 けれども、この作品のすごいところは、終始「ほのぼの」。すごい“事故”が起きたあともすんなりと日常に戻っていけるところだ。

爽やかな絵柄なのに、ちゃんと肌色シーンも入っている、このバランスの良さ

 そして高校生・秋人の変異…、いや成長も著しく読み手を“ほっこり”させる。ウブな義理の息子から回を重ねるごとに立派な“攻め”に育っていく。
 義理の父に性的な思いを抱いて悩んでいるところから、すっかりリードしていく存在になっていくのだ。

 しまいにはこんなセリフを言うくらい。

「ねえ、キスしていい?」(一義の返事を待たず)「するね…」p67より

 少女マンガ的理想の“ちょっと強引”な王子様キャラへと育っていくのだ。こんな強引な姿を見せられたら、もうメロメロ。読み手は秋人に恋してしまうだろう。

読み手をキュンキュンさせる、秋人の成長っぷりも注目したい!

 童貞の男子高校生が“強引攻め”に育って、実は義理の父が“童貞”と分かってからはどうなるのか? その恋とカラダの関係のゆくえを見守りたい。
 BLに目が肥えた人も、一周回って「少女マンガ」っぽさをBLに求める人も、思いもよらぬトラップにドッキリさせられるはず。ぜひ手にとって欲しい。

単行本発売に合わせてフェアを実施中! 詳しくは『drap』最新号にて

■高岡七六先生の最新情報は
『drap(ドラ)』6月号にて!
価格:731円+税
発売日:2016年4月30日(土)
出版社:コアマガジン

公式HP

文=武藤徉子