「部下が動かない!」と嘆く前に、上司が気をつけるべき3つのポイント

ビジネス

公開日:2016/5/10


『今いる仲間で「勝手に稼ぐチーム」をつくる』(池本克之/日本実業出版社)

  多くの企業で4月は新年度、今までの仕事が認められて、新たにチームリーダーとなり、部下をもった人もいるでしょう。しかし、いざ仕事が動き始めると、自分が忙しいばかりで部下は動かず、チームとしての成果がなかなか上がらない、などということも多いのでは?

今いる仲間で「勝手に稼ぐチーム」をつくる』の著者である池本克之氏は、その理由を「有能なプレイヤーと優秀なリーダーは違うからだ」と、断言しています。仕事のできるリーダーがいるチームが、必ずしも良い結果を出せるとは限らない。むしろチームが迷走する可能性が高いのだとか。その考えは、ご自身の苦い経験からきているそうです。

 チームを率いるリーダーとして、気をつけるべき3つのポイントを、池本氏の著書より、見ていきましょう。

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「自分が働けばいい」は失敗の第一歩

 池本氏は大学を卒業後、中堅のリース会社に入社し、2年目にして部下7人を任されるリーダーとなりました。

 資金調達部門でリーダーとなった氏は、部下がやるべき仕事を、ほとんど自分で行なっていました。それは、部下をまったく信用せず、「自分がやったほうが正確だし、いいものをつくれる」という自負があったからです。

 いま考えると、「仕事を取り上げていた」と言ったほうが正確だったかもしれない……、と池本氏は本書の中で述べています。

 部下が帰ってからは、毎晩終電間際まで7人分の仕事をして、それでも終わらなければ、翌朝は始発で出社。睡眠時間は3~4時間。部下が仕事で成果を出しても褒めもせず、「教えてもどうせわからないだろうし」と見下し、ある日、部下が一斉に「辞めます」と言い出しても不思議ではない状況だったそうです。

 どんなにやる気のある人でも、最後まで仕事を任せられなければ達成感を得られず、仕事に対するモチベーションも下がります。また、自分のことを認めてくれない上司を信頼することもなく、「どうせ、上司が残りの仕事をするのだから」と、成果を出すことに対しての責任をもたなくなります。

 池本氏は自身の失敗から、リーダーとして部下と関わるうえで、以下のポイントに気をつけるべきだと述べています。

Point1. 人に仕事を任せよう

 池本氏も体験したように、有能な人は、「他の人に仕事を頼むより、自分でやってしまった方が早い」と考えがちです。

 実際に、部下に仕事を任せたものの、教えることに時間をとられたり、何度もやり直しが必要になるなど、結果として二度手間になってしまうことがあります。そのようなときに、仕事ができる人にとっては、「人に仕事を任せない」というのが仕事を進めるには一番早い方法かもしれません。

 しかし、どんなに有能なリーダーでも、1人でできる仕事量・稼げる金額は限られています。1人のリーダーが2倍、3倍働いたとしても、2人分、3人分にしかなりませんが、5人のスタッフが50%増しの力で働けば8人分ぐらいの力となり、結果的に効率のよいチームをつくることとなるのです。

有能なリーダーが1人いるだけでは、組織の業績は上がりません。リーダが一人前でも、スタッフがみな半人前だったら、チームとしては半人前になってしまうのです。
本書21ページより

Point2. 人に教えよう

 人が最も早く成長する方法は、「人に教える」ことです。

 自分自身の能力を高めるために、ビジネス書を読んだり、スキルを身につけるためのセミナーに通う方法もあります。しかし、それだけでは、ある程度の個人としての成長はあっても、リーダーとして伸び悩むことも多いのです。

 人に教えようとせず、自分ですべてやってしまう有能なリーダーのチームでは何が起きるのでしょう?

スタッフは自分の仕事の意味もわからず、仕事のやりがいもかんじられず、ただ言われたとおりのことをやるだけなので、いつまでたっても自分で仕事を見つけるようにはなりません。
リーダーはそんなスタッフの姿を見て、「どうしてみんな、やる気になってくれないんだ?」と不信感を募らせます。

結果的にチームワークが悪くなり、業績不振につながるのです。
本書22ページより

 自身の研鑚のみに終始するのではなく、人に何かを教えてみることで、あらたに気づけることがたくさんあります。

 たとえば、実際に人に何かを教えてみると、自分の指示したことの半分も伝わればいいほうで、2~3割しか伝わらない場合がほとんどのことに気づきます。そこで「どうしたら伝わるか」「どのような言い方をすれば理解してもらえるか」と考えながら教えることで、コミュニケーション力は格段にアップします。

 また、人に教えていくなかで、自分が何を理解し、何を理解していなかったのかを知ることができます。わかったような気になっていただけで、実はわかっていなかった仕事というのは、意外とたくさんあるものです。それを、あらためて勉強し直し、正しい情報を部下と共有することが、結果的にリーダーの成長に、ひいてはチーム全体の成長へとつながります。

Point3. 人を信用しよう

 人に仕事を任せられないリーダーというのは、人を信用できていないともいえます。

 人に任せられないからと、部下の仕事にまで手をだす。自分がやればいいからと教育もしないので、任せられる部下が育たず、新たな仕事が追加されるだけ……。これでは、いくら時間があっても足りず、いずれ限界がおとずれます。

 せめて、ナンバー2の部下に新人たちの教育をしてもらえばいいのですが、有能なリーダーはそこも信用できず、あれこれと口出しをして、「やっぱり任せられない」という結論になってしまいます。また、相手を信用していないと自分も信用してもらえないので、お互いに信頼関係が築けないチームができあがってしまいます。

 やがて仕事は後手後手に回り、業績は上がるどころか落ちていくことに……。「人を信用する」ことなしに、チームとして成果をだすのは不可能といえます。

 もし、あなたの部下がやる気のない状態になっていたら、不満に思う前に自身の在り方を振り返ってみてはどうでしょう。それをキッカケに部下といい関係が築けるかもしれません。

 そして、誰か1人のエースが稼ぐのではなく、チームとして成果を出す体制をつくること。それが、リーダーとしての役割だと池本氏は言います。『今いる仲間で「勝手に稼ぐチーム」をつくる』の中では、さらにチームメンバーを「自分で課題を見つけ」「自ら動く」、「勝手に稼ぐチーム」に変える「独自の手法」を紹介しています。

 部下との関係や、チームとしての成果に悩むリーダーの方にとって、役立つ一冊ではないでしょうか。

文=日本実業出版社