このシーンにおすすめのクラシックはどれ? 新しいクラシックの楽しみ方

音楽

公開日:2016/5/5


『聴きたい曲が見つかる! クラシック入門~毎日が満たされるシーン別名曲』(曽我大介/技術評論社)

 音楽の好みは人それぞれだが、クラシック音楽を耳にしたことがないという人はいないだろう。少なくとも学校の音楽の時間には聞いたことがあるはずだ。しかもCMやドラマのBGMとしても流れることが多い。だからもっとなじみがあってもおかしくないのだが、どうも「クラシック音楽」という言葉を聞いただけでハードルが高いと感じてしまう人が少なくないようだ。そこで、今回はどんなシーンにどんなクラシック音楽がおすすめかを教えてくれる『聴きたい曲が見つかる! クラシック入門~毎日が満たされるシーン別名曲』(曽我大介/技術評論社)をご紹介する。

まずはド定番からレクチャー

 「クラシック音楽と言えばどの曲?」と聞かれたとき、小学生でも名前を挙げるに違いないというほど有名な曲がある。ベートーベンの交響曲第5番「運命」だ。曲名を思い出せなくても「ジャジャジャジャーン」と特徴あるメロディーは言えるというくらいクラシックの代名詞となっている曲だ。だからこの本でも1曲目に挙げられているのは「運命」。最初はクラシックのド定番ともいう曲ばかり10曲集めて、どんな背景で作られたか、聴きどころはどこかといった話から始まっているから、ハードルが下がって読みやすいのだ。クラシック好きが読んでも読みごたえある内容をキープしながら、クラシックど素人の読者も興味を持ちそうな点をピックアップしながら話を進めている点がこの本の魅力だ。例えば、「ジャジャジャジャーン」は第1楽章だけで250回以上も繰り返されているとか、モーツァルトの「レクイエム」は自分自身のレクイエムでもあって、完成させたのは弟子だったという話は、これまであまりクラシックに関心がなかった人でも興味深く読めるだろう。

シチュエーション別におすすめの曲をセレクト

 定番の10曲の後は、シチュエーション別におすすめの曲をセレクトして紹介するというスタイルが採られている。

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1. クラシックのド定番
2. 慌ただしい朝こそ音楽を
3. 音楽は旅の友
4. 愛に音楽はつきもの
5. 大自然を肌に感じられる音楽
6. 特別なシーンをよりスペシャルにする音楽
7. 日常に音楽をさりげなく
8. 食事、お酒と味わう音楽
9. 今の気分にとことん寄り添う音楽
10. 妄想して音楽を愉しむ

 以上10の切り口でド定番の10曲以外は5曲ずつ詳しく紹介されている。そして、それぞれの曲紹介の〆として、同じようなシチュエーションに合う曲を他に2~3曲挙げているところもにくい演出だ。

クラシック音楽と愉しむ妄想?

 著者の切り口の中で「妄想して音楽を愉しむ」というタイトルが気になった人は私以外にもいるのではないだろうか? 他の項目はシチュエーションに合わせて音楽を選ぶという流れなのに対して、この項目だけは音楽を元に妄想するという方向になっている。具体的にどのような妄想が想定されているのかというと、「バレエ音楽『春の祭典』第1部~春の兆しと男女の踊り」は、「悪の秘密結社を結成。世界征服を狙う悪の主役になったとき」というのだから、かなり突拍子もない妄想だ。他にも「人類として初めて火星に着陸。火星を歩くときに」というおすすめでヨハン・シュトラウス2世のワルツ「美しき青きドナウ」が紹介されていたから、一度ためしに妄想してみたい。

付属のCDをクラシックの世界の入り口に

 気持ちよく目覚めた朝やおいしいお酒を飲んでほろ酔い気分の時など、さまざまなシーンに合うクラシック音楽をプレイリストのような形で紹介してくれているこの本。紹介曲の一部は付属のCDで聴くことができ、それ以外の曲もクラシックを中心とした、聴き放題の定額制インターネット音楽配信サイト「ナクソス・ミュージック・ライブラリー」で楽しめるようにQRコードが掲載されている。これまでクラシック曲を敬遠してきた人も、付属のCDを入り口としてクラシックの世界を旅してみてはいかがだろうか。

文=大石みずき