児玉清さんがのこした、未来に進むための道しるべ4冊

芸能

2011/9/5

「本の中には、僕の現実の世界をはるかに超えた豊かな世界が広がっている――」
  
 テレビ司会者、書評家としても活躍し、大の読書家として知られた俳優の児玉清さんが5月16日、逝去した。享年77歳だった。
  
 冒頭の言葉は、自伝エッセイ『負けるのは美しく』の中に記されたひと言。シンプルな言葉には、改めて、生涯読書を楽しみ、愛したその姿勢が静かに浮かびあがる。
  
 小学生の頃、夢中になった講談本をきっかけに本好きになった児玉さんは、高校時代にオーストリアの作家、S・ツヴァイクに心酔。外国文学の世界への傾倒ぶりは、「原文で読みたい」と学習院大学独文科に進学したことからも垣間見られる。
  
 そしてNHK-BS『週刊ブックレビュー』の司会を18年間務める一方で、新聞、雑誌などの連載をはじめ、海外面白本探求の日々を綴った著作『寝ても覚めても本の虫』など、書き手としての才能を遺憾なく発揮した。また、有川浩『阪急電車』、百田尚樹『永遠の0』、ケン・フォレット『大聖堂-果てしなき世界』などの解説も手がけ、「児玉さんが解説を書いていると読みたくなる」というファンも少なくない。
  
 さらに児玉さんが遺したもののひとつに、2010年の国民読書年を記念して出版文化産業振興財団が企画、多くの自治体で実施されている「20歳の20冊」の選者の仕事がある。同事業は、新成人のために、杏、金原瑞人ら6人が選んだ計20冊の中から、成人式に好きな一冊を贈るというもの。そのリストの中で、児玉さんは、下記の4作品をセレクトしている。
  
・『ジョゼフ・フーシェ』 S・ツヴァイク ・『蝉しぐれ』 藤沢周平 ・『ナイフ』 重松清 ・『ベスト』 カミュ
  
 未来に進むための道しるべとしてセレクトした4冊。それらには、新成人のみならず、すべての大人に向けた児玉さんの願いが込められているかのようだ。多くの人々に本との幸せな出会いをつくってくれた児玉さんのご冥福を心よりお祈りしたい。
  
(ダ・ヴィンチ8月号 出版ニュースクリップより)