堀江貴文が語る、日本が“激安”になった今こそ捨てるべき価値観とは?

ビジネス

公開日:2016/5/4


『君はどこにでも行ける』(堀江貴文/徳間書店)

 出所から3年弱。この間に30回以上海外に行き28カ国58都市を巡り、世界を見てきたという堀江貴文氏。本書『君はどこにでも行ける』(徳間書店)は、そんな世界を知る堀江氏が綴った、日本と日本人、特にこれからの日本を支える若年世代に対する熱いエールである。

 日本の現状から世界情勢とグローバリズムまで、多岐にわたるテーマを題材にしたエッセイだ。 そのタイトルに込めた思いを堀江氏はこう記す。

「この本では、日本にいようが、海外にいようが、やれることなんて、いくらでもあると伝えたい。まずはその一歩が、日本の現状を知ることだ」

 日本の現状を伝えるため、堀江氏が本書で最初に検証するのは「日本がどのくらい安くなってしまったか」についてである。そもそも日本になぜ、アジアの観光客が押し寄せているのか? その答えは「日本が安くなってしまっているから」。これは為替の問題ではないという。「日本はあらゆるものの価格に対して品質やサービスが良すぎる」と堀江氏は指摘し、こんな驚きの海外事情を紹介する。

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「シンガポールで、西麻布のある有名な寿司屋のNo.2が独立してできた店がオープンした。2015年に訪れたが、普通に食事した程度で一人あたりの会計が800シンガポールドルだった。日本円で7万円前後だ。」

 他にも、中国の北京では、日本で2000円を切るユニクロのフリースが5000円以上で売られていることなどが明かされる。こうした日本の現状を「安売り時代」と表現する一方で、「それは決して悪いことではない。むしろ、グローバルのビジネスにおいて、確かなアドバンテージを取れるチャンスだ」と堀江氏は記す。

「日本は地政学的に、伸び盛りのアジアマネーを、うまくすれば総取りできるポジションにいる。“円”が安くなったことで、中国など強大なマネーパワーを持つ国と組みやすくなった」など、今だからこそ生かせるチャンスがたくさんあるという。そして、次のようにあおる。

「日本が買い叩かれている。結構なことだ。アジアマネーの呼びこみを成功させて、未来型のグローバルビジネスを構築していく絶好のタイミングだ。そういう時期だというのを、ほとんどの日本人は気づいていない。それどころか、現状から目を逸らそうとしている人も多い。」

 では、グローバルビジネスを構築するために、海外経験や語学スキルなどが必要なのではないか? 堀江氏の意見はこうだ。

「ネットインフラが発達して、海外の主要な情報はどこにいてもほぼ手に入る」という堀江氏は、「『若者よ外へ出ろ!』などと思わない。行きたければ行けばいいし、行きたくなければ行かなくていいのだ」としつつ、むしろ大切なことをこう指摘する。

「ネガティブな思い込みと強いストッパー、頭の中の国境を消すことが大切だ。その国境を消すことが、本当の意味で世界に飛び立たせる。」

 また、語学スキルなどに関しては、こんな意見を述べている。

「グローバル社会を生き抜くには、英語力やITスキルなど特別なアイテムがないと難しいというイメージを持たれているかもしれないが(もちろんあっても損はない)、本当に必要なのは、そういうツール的なものではない。
 もっと思考の深い部分での理解だ。人はみんな、『どこにでも行ける』という本質的な事実を理解すること。」

 堀江氏によれば、シェアエコノミーの概念が急速に進んだことにより、国と国を区切る厳密な意味は、薄まってきたという。その現実を、若い世代こそ知るべきなのだ。

 本書では他にも、アジアの驚異的な経済発展の様子や、アメリカの宇宙ビジネス、イースター島やマチュピチュ遺跡探訪記、それでも東京という大都市が世界最高レベルであること、海外を飛び回る中で気づいた最大の壁について、などのテーマについて綴っている。

 そして最後には、本書の装画を描いた漫画家、『テルマエ・ロマエ』でおなじみのヤマザキマリさんとの対談も収録されている。対談テーマは「ブラック労働で辛い日本人も、無職でお気楽なイタリア人も、みんなどこにでも行ける件」。

 空気を読まないで言いたいことを言うので炎上もしょっちゅうだというヤマザキさんは「何をやってもいい、どこに行ってもいい」という堀江氏の意見に同調し、こう語る。

「みんな変化に対応していけないとか、まわりの空気を読んで行動できないとかで悩んでるけど、全然大丈夫だと思うんです。いま何をしたいのかわからなくても目の前のことにとことん向き合っていれば、自然に、やりたいこと、やるべきことは見つかります。そうなっていくのが人生だから」

 堀江氏の発想はとても前向きで楽観的だ。まずは本書が指摘する日本の現状を受け入れつつ、自分の立ち位置をはっきりさせ、思い込みで凝り固まった価値観を変えてみる。すると世界がもっと開かれ、「どこにでも行ける」ようになるのかもしれない。

文=トトノ うさき