「神楽坂」の会員制・昼酒バーに現れる素人探偵とは?

文芸・カルチャー

更新日:2017/11/28

「インディゴの夜」シリーズでクラブ系の男の子たちがはべる、おかしな渋谷のホストクラブを描いた加藤実秋さんの新作小説『黄金坂ハーフウェイズ』(角川書店)が登場。
  
東京の人気スポット・神楽坂をモデルに描いた本作は、これまでの“加藤・ご当地ミステリー”とはひと味違う連作ストーリーだ。
  
「この不思議な雰囲気の町を書いてみたいと思って。本作では四季折々のイベントに乗せた5つの短編で、この町に住む男の子たちの一年を追い、就職浪人&プータローという微妙な立場の彼らがどう変化していくかを描いてみようと思いました」と加藤さん。
  
地方での就職に失敗して実家に戻ってきた隼人が、高校時代の友人・楓太にひきずられてやってきたのは会員制・昼酒バー。奇妙なバーテンダーのいるここを事務所代わりに、いつしか二人は素人探偵に。
  
「男同士って、進学や就職などで状況が変わっても、ずっと一緒にいて、そのまま変わらずに付き合い続けるような気がして。でもやっぱりいろいろとたまってくるものはあるだろうなと。(佳境の)第四話では、腐れ縁・隼人と楓太のこじれ方を、その内側にはどんな感情が渦巻いているのかを突き詰めてみました」
  
「社会人として踏み出さなければ、と煮詰まっている隼人と楓太は、変わらなければならない時期。先送りやごまかしのないように二人の関係を描きました」 私、人を殺したんだ――高校時代、隼人にそう告げ、事故死した朝美。担当教師と不倫をしていた彼女は、皆が想いを寄せる女の子だった。最終話では、その言葉の意味と彼女の死の原因を考えることからずっと逃げていた隼人がそこへと向かう心理との対峙が描かれていく。
  
「若い時はただでさえ自意識過剰だし、閉塞感も感じているから、しんどいと思うんですよね。でも切り抜ける方法は絶対にある。“なんとかなるよ”ということをこの物語から感じていただけたら。まずは神楽坂の雰囲気を味わいつつ、ユルい謎と友情を楽しんでください」
  
(ダ・ヴィンチ8月号 今月のブックマーク EXより)