「いい質問ですね」は、会話が途切れない黄金フレーズ!【鼎談】パックン×小栗左多里&トニー・ラズロ

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2016/5/13

トニーとパックンの共通点 アメリカ人ぽくない言語オタク

小栗 パックンとは家族ぐるみのお付き合いだよね。パックンご夫婦より私たちのほうがかなり年上なんだけど、お世話になりっぱなし。

パックン 今日も、この鼎談のあとうちに来るんだよね。

小栗 家族旅行も企画してくれたよね。宿も全部取ってくれて。

パックン グアム、石垣島、富士山こどもの国、いろいろ行ったね。仲よくなったきっかけは、NHKの『英語でしゃべらナイト』かな。トニーさんがゲストで何度か来てくれて。

小栗 初対面のとき、トニーと2人で「勉強大好き! 勉強っていいよね」って盛り上がってたね。

パックン そう、僕も言語オタク。トニーさんほど重症じゃないけど。アメリカ人同士というのももちろんだけど、2人ともチェスが好きで、子どももほぼ同い年。トニーさんとは共通点ばっかり。

トニー パックンも、何かアメリカ人じゃなくなったね。

パックン 確かに。僕は93年に日本に来たから、24年目、日本にいる時間のほうが長くなった。アメリカ人ぽくないのも共通点でしょう。お互いに空気が読めて、気を遣うし。多言語を話せるだけで、もうアメリカ人としては珍しい。普通、英語しか喋れないから。実は僕、トニーさんを目指してるんですよ。異文化に目を向けて、上から目線ではなく、その文化と対等に付き合っている。そういうところいいですよね。

トニー パックンは何でも上手だから尊敬します。でもときどきフラストレーション。前に、「マークルック」っていうタイの将棋で遊んだことあったでしょう。あのときも、パックン初めてなのに、あっという間に負かされちゃった。

小栗 天才だ。

パックン とんでもない。トニーさんが弱いだけ!僕はトニーさんほどスキルがなくて、外国語も日本語しかできないし。まともに結局できたのは、日本のお笑いだけ!マルチタレントが天職だったんだよね。コメンテーター、食レポ、旅ロケ、広く浅く仕事ができて本当に楽しい。

小栗 忙しいのに、プライベートでもよく遊んでくれるよね。並の人より、すごくパワーがあるんだと思う。

ベルリン3年目は観光客から住民へ

パックン ベルリンは3年目になって、だいぶ慣れた?

トニー 私は慣れたね。もう、来たばっかりとは言えない。人にアドバイスをもらうんじゃなくて、あげる側にならないと。

パックン 僕も来日3年目くらいから楽しくなった。やっと観光客から住民になれた気がして、急に自由になった感覚。助けてもらうだけの立場から、少し周りに貢献もできるようになった。左多里さんは、どう?

小栗 ものすごく頼ってるけど、トニーに。生活には慣れてきた。良く使う2つのフレーズさえ押さえておけばなんとかなる。

パックン その2つはなに?

小栗「お会計お願いします」と「コーヒーのミルク入りをテイクアウトでお願いします」。

パックン 長いフレーズだ。すごい! トニーニョ君は、現地の小学校に慣れた?

小栗 馴染んだね。でもベルリンの学校は進度がゆっくりでドキドキする。

トニー 日本では割り算を習う頃に、まだかけ算をやっていたりするね。でもその反面、自立を重視するよね。2年生から自分のスケジュールを管理しないといけない。いつ宿題を提出するとか、いつどの科目の授業を受けるとか。大袈裟にいえば、それさえできれば中学への入学準備が整っていると評価される。

パックン へー、すごい。僕なんていまだにスケジュール管理できてない。奥さんとマネージャーに頼りっぱなし。アメリカの小学校教育とも全然違うね。

「いい質問ですね」幸せに喋る技術

トニー 今、トニーニョのことでちょっと悩んでいて。ベルリンの学校では、授業中に積極的に手を挙げて発言することが求められるんだけど、彼はあまりそれが得意じゃない。

小栗 発言しないと授業に参加していないと見なされて、如実に成績が下がるんだよね。

トニー 性格的なこともあるかもしれないけど、テクニックでカバーできないかなと。たとえば、わからなくても取りあえず手を挙げて、あてられたら「ええっと」とか言いながら考える時間を稼ぐみたいな。

パックン 話術のことなら任せて! そういうふうに考える時間を作るコツ、すごく大事です。トニーニョ君だけじゃなくて、会話を途切れさせないために、大人の皆さんにもおすすめ。それが一番上手いのは、池上彰さんだね。彼、質問されたらいつも最初に何て言ってる?

小栗「いい質問ですね」。

パックン そう! 「いい質問ですね」「待ってました」「昔から思ってたんだけど」とか、まずある種無意味なことを自動的に口から出す。その間に考えをまとめて、落ち着いて話し出せばいい。日本人の皆さんが、英語を喋るときにも使えますよ。「That’s a good question」「Let me think」とか言っている間に、英語を考える。これ、専門用語では“ブリッジ”っていいます。

小栗 パックンは大学でも教えているよね。大学の学生さんは、ちゃんと手挙げてる?

パックン まさにそれ、すごくいい問題。全然挙げない。学びにきているはずなのに、黙り込んだままでとても残念。だから、僕の授業では質問をする前に全員に手を挙げてもらって、答えられない人だけが下げるようにする。地方で講演もやるんだけど、そのときもお客さんは堅苦しい雰囲気だよね。だから最初の3分間は、お客さん同士自己紹介をしていただく。そうすると急に全体が和やかになるね。強制されたことではあるんだけど、喋ると楽しい。皆、喋りたいんだよね。喋れば幸せになれる!

小栗 トニー、メモってるよ。日本人はシャイだから、そういうきっかけは大切かもね。基本的に授業は一方的に詰め込まれるだけだから、自発的に発表する文化が身に付いてないんだよね。

パックン 大人になって一番必要なスキルは、話すこと、聞くこと、考えることでしょう。だから皆幸せに喋れるように、勉強して練習しよう。それを広めるのが僕のライフワークだと思う。

パックンにアメリカの大学受験を聞く

小栗 アメリカも大学入試はあるの?

パックン あるけど、日本のとはだいぶ違う。ドイツは?

トニー  ドイツも結構、学歴が重要視されているけど、大学進学を目指す子は、小学4年生のときに「ギムナジウム」に転校する。ベルリンは6年生でもOKなんだけど。

パックン 独特のシステムだね。アメリカの大学受験は試験、高校の成績、小論文、面接、いろんなことが加味される。面接は大学のOBがやったりするんだけど、やり方は人それぞれ。僕がハーバードを受けたときには、OBとハンバーガーを食べながらざっくばらんに話しただけ。

小栗 そんな感じなんだ。

パックン 受験アドバイザーみたいな人もいるよ。ニューヨークなんかでは、有名な幼稚園に入れるのに親が必死、というような状況もあるし。でもいわゆるお受験は、日本ほど一般的じゃない。

トニー 履歴書にあたるレジュメも重要視されるね。日本は履歴書ってスペースが決まっているけど、アメリカは自由に書いていい。ボランティア活動の経験とか、海外留学とか、アピールできることをいっぱい書くね。

パックン そう。決まった英語のフレーズがあるよ。たとえば、海外で灌漑設備を作るボランティアに参加しました。そうすると、「That could be a good line on your resume」って言う。履歴書にいい1行が書けますね、っていう意味。

小栗 本当に日本とは全然違うんだね。

取材・文=松井美緒

【プロフィール】

小栗左多里
岐阜県生まれ。1995年に漫画家デビュー。ベルリンでの生活を綴った『ダーリンは外国人 ベルリンにお引越し』『ダーリンは外国人 まるっとベルリン3年目』が大好評発売中。『ダーリンは外国人1~2』『ダーリンの頭ン中1~2』『ダーリンは外国人 with BABY』、『さおり&トニーの冒険紀行 フランスで大の字』ほか「大の字」シリーズなど著書多数。

トニー・ラズロ
ハンガリー人の父とイタリア人の母の間に生まれ、米国に育つ。1985年より日本を拠点にライターとして活動。92年に多文化共生を研究するNGO「一緒企画(ISSHO)」を設立。著書に『トニー流幸せを栽培する方法』など。

パトリック・ハーラン
1970年、コロラド州出身。ハーバード大学卒業後に来日。97年、吉田眞とパックンマックンを結成。『英語でしゃべらナイト』(NHK)などで注目を集め、タレントやコメンテーターとして幅広く活躍。2012年、東京工業大学非常勤講師に就任。現在『あさチャン!』などに出演中。著書に『ツカむ!話術』(KADOKAWA)など。