ハガレン作者、荒川弘の新作マンガは実家の酪農家がモデル
公開日:2011/9/5
作者の荒川氏自身も農業高校出身で、実家の酪農家で働いていたという。実体験が存分に生かされた、テーマ性の高い作品なのである。
主人公の八軒勇吾は新学校に通っていたが、なぜか一転して北海道の大蝦夷農業高校酪農科学科に入学。彼を待っていたのは、寮生活とハードな農場実習。未知の世界に戸惑い、将来の夢もない自分に焦る勇吾だったが、家畜の世話や同級生との友情を通じさまざまな発見をしていく。汗と涙と土にまみれた、酪農青春グラフティーだ。
物語のなかでは家畜の“いのち”について触れられている。産卵率が下がって淘汰される鶏や3ヵ月後になる食肉になる子豚を見て、勇吾は家畜の“いのち”を奪うシビアな現実にショックを受ける。同時に、その“いのち”をいただくことに大きく感動もする。奪うことといただくことは、離れ難く両立している。この二つをどう受け止めればいいのだろうか?
私たちは通常、家畜の“いのち”など考えずに生活している。しかし、『銀の匙』はその現実を鮮明に見せてくれる。 「“いのち”の意味とは何か?」―― それは、私たちにとって一番必要な問いだ。それを教えてくれる『銀の匙』は、現代に生きる私たちが最も読むべきマンガなのだ。
(ダ・ヴィンチ8月号 コミックダ・ヴィンチより)