松尾スズキがススメる岡本太郎的生き方

芸能

公開日:2011/9/5

 岡本太郎生誕100年にあたる今年、彼の足跡を描いたドラマ『TAROの塔』がNHKで放送された。 そしてこの度、本作のDVD(発行/NHKエンタープライズ)がリリース。岡本太郎を演じたのは、演劇界の奇才・松尾スズキさんだ。  
  
 松尾さんのおススメの1冊も岡本太郎の著書、『自分の中に毒を持て』(青春文庫)。  「と言っても、読んだのはずいぶん前なんです」。  実は2006年に、主宰する大人計画の舞台『まとまったお金の唄』で、「太陽の塔を爆破しようとした過激派の話」を描いている。  「太陽の塔もその時に初めてナマで見に行って、なんて凄いんだろうと。あのスケールは近づいてみないとわからない。あのデカさのインパクトと無意味さは。岡本太郎って、僕の中ではバラエティ番組の中で道化扱いされている、人とコミュニケーションが上手くとれないおじさんみたいなイメージがあったんですけれど、それとあの迫力あるものを作った人が結びついた時にものすごい衝撃を受けた」  
  
 岡本太郎は言う。 「芸術はきれいであってはいけない。うまくあってはいけない。心地よくあってはいけない」 松尾さんは「まさしく自分のやってる演劇の道もそれだなって。素人を舞台に立たせたり、嫌な話にしたり、ここでちゃんとやれば感動的な話で終わるのに笑いを入れたりとかして。けど笑いの質についてキチンと論じてくれた劇評なんて20年間ひとっつもないですからね。誤解されやすいところまで一緒だなと」と語る。   
  
 震災の影響で2週間ほど空いて放送された第3話は焼野原で始まる。瓦礫と化した日本を前にして、岡本太郎はどうしたか。復員兵の姿でシャンソンを歌うのである。  
  
 「衣食住も奪われた時に、芸術っていうのはどういう価値を持ちうるのか。あの時、表現する人は誰もが考えたと思うんです。太郎さんは火だるまになって、芸術の必要性を主張し続けてくれた。この本の最後の締めも凄いですよ。<人類が滅びたっていいじゃないか>ですから。いかに自分が良識のしがらみの中で生きているかってことに気づかせてくれる。やっぱり、こういう時にこそこういう本を読むと力が出ると思うんですよ」  
  
(ダ・ヴィンチ8月号 あの人と本の話より)