『ワタモテ』『影野だって』に続く人気となるか!? “喪女マンガ”最新作『ブスに花束を。』

マンガ

公開日:2016/5/14

 「喪女」という言葉を知っているだろうか? これはネットスラングのひとつで、「モテない女性」のことを指す。喪女の特徴はいくつもあるが、基本的にネガティブで根暗。その言葉の響きと相まって、なんとも悲壮感が漂う……。しかし最近、そんな喪女を主人公にしたマンガがジワジワと増えているのだ。

 代表的な作品といえば、『私がモテないのはどう考えてもお前らが悪い!』(谷川ニコ/スクウェア・エニックス)だろう。暗くコミュ障な主人公・黒木智子がモテるために努力を重ねる物語だが、そのどれもが極端で的外れ。しかも、彼氏がいる女子を「ビッチ」と呼ぶなんとも自己中な性格だから、モテないのも当然。けれど、憎めないキャラクターでもあり、読者の共感を集めているよう。本作はテレビアニメ化もされ、喪女というものが広く知られるきっかけとなった作品だ。


 タイトルに喪女を冠した、『眠れる教室の喪女』(風上 旬/秋田書店)という作品もある。周囲に馴染めない主人公・田の中じゅえるが、休み時間に夢の中に楽しみを見出すコメディで、「休み時間には寝るしかない」というぼっちの状況をリアルに描いている。また、『影野だって青春したい』(北川夕夏/講談社)では、ひょんなことから学校一のイケメンの彼女役をするはめになってしまった、影野由輝の慌てぶりが描かれている。イケメン耐性のない影野は、なにをするにも挙動不審。それを見て楽しむイケメンと、やがては付き合うことになるのだが、デート中もマイナス思考が炸裂するあたり喪女を抜け切れていない。

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 そして、『ヤングエース』5月号にて連載が始まったばかりの新しい喪女マンガが、『ブスに花束を。』(作楽ロク/KADOKAWA)だ。もうタイトルだけで破壊力抜群の本作。これがとてもおもしろいのだ!

 主人公・田端花は、生粋の喪女。少女マンガのヒロインに憧れは持っているものの、「自分にはそれは訪れない、なぜならブスだから」「自分はせいぜいモブ止まり」と、自己評価が底辺なのだ。上昇思考があるのかというと、それもなく、できれば目立ちたくない。美化委員として毎朝教室の花を替える仕事があるが、誰にも見られたくないからと、教室に一番乗りしてコッソリ職務をまっとうする。

 しかしある朝、気まぐれで花を髪の毛に挿し、悦に入っているところをクラス一のイケメン・上野くんに目撃されてしまう。そこから喪女の妄想力が全開に。上野くんに「頭に可愛いのつけてるね」と言われても、「『お前、何色気づいてんだ』ってことですね!」とその場から逃走。その挙句、「花挿しブス」というあだ名がつけられてしまうことを恐れ、上野くんに口止めを画策するのだが、これがうまくいかない。なにせ上野くんはリア充。ひとりきりになる瞬間なんてないのだ。口止めをしようにも、常に取り巻きがいる状況。その中に割って入るほどの勇気は、喪女にはない。

 しかし、放課後、上野くんから「話あるよね?」と声を掛けてもらう。そこでようやく田端は、自分が毎朝花を替えていることを内緒にしてほしい、と交渉をするのだが、その瞬間上野くんは頬を赤らめる。そして、「毎朝花を替えている人に、ずっと会ってみたいと思ってたんだ。……頼まれなくても、多分誰にも言わなかったと思うよ。田端、ふたりだけの秘密な」と、イケメンにだけ許されるセリフを吐く。これには田端も一瞬勘違いしそうになる。……が、持ち前のネガティブ思考で、「いまのはおそらく、『弱み握ったぜ!』ってこと」と自分を落ち着かせる。哀しいかな、これが喪女の習性なのである。

 はたして、田端と上野くんは恋に落ちるのか。田端の学園生活はキラキラと輝き出すのか。自らを「ブス」と称する喪女に、イケメンから花束が渡される日が来ることを願いつつ、今後の行方を追いかけていきたいと思う。

文=五十嵐 大