強き者が富も女も名声もすべてを手にする! 遊牧民成り上がり異世界戦記ファンタジー『草原の掟』

マンガ

公開日:2016/5/16


『草原の掟』(名はない/フロンティアワークス)

 「MFブックス」「アリアンローズ」のフロンティアワークスが創刊した、ライトノベルを卒業した大人の男性に贈る、新しいライト文芸レーベル「ノクスノベルス」。今回は、己の強さだけを頼りに大草原でハーレムを築いていく遊牧民成り上がり異世界戦記ファンタジー『草原の掟』を紹介する。『草原の掟』(名はない/フロンティアワークス)は、小説投稿サイト「ノクターンノベルズ」にて連載していた人気作品の書籍化だ。ちなみに作者名は誤字ではなく、名はないさんが名前だ。これを機にぜひ覚えていただきたい。

 武芸家として名を馳せた1人の男がいた。しかし平和な現代社会においては強いことはモテる要素ではなかった。強さをふるう機会も得られずに飛行機事故で死亡した男は、異世界の騎馬民族の少年ジュムカとして転生する。広大な草原で馬と羊を放牧して暮らす遊牧民の生活は決して長閑で平穏なものではない。野生の獣の襲撃や他部族の侵略など常に命の危険と隣り合わせ。そこでは強い男が富も女も名声もすべてを手に入れる弱肉強食の世界だった。

 主人公ジュムカは、現代人の生まれ変わりだ。転生前は武芸家だった知識を活かし、幼い頃から過酷なトレーニングを課して力と技を鍛え直す。部族で成人として認められる15歳になる頃には、他に並ぶ者のない戦士の身体を手に入れる。大人たちからは期待を集め、年下の者からは尊敬を浴び、年頃の娘たちからは熱い眼差しを向けられる草原の男へと成長する。

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 草原の部族は厳しい戒律によって明確な階級社会を形成している。まず家長である父親が一番偉く、次いで妻とその子供たち。さらに次いで隷妻という戦争で奪ってきた妾たちとその子供たちという順番だ。しかし隷妻が冷遇されているわけではなく、偉大な戦士の隷妻になることは、むしろ名誉であると考えられている。その他にも様々な決まり事や儀式があり、独特の異世界文化が興味深い。

 成人して間もなくジュムカの実力は他部族との戦争で発揮されることになる。初陣にもかかわらず、周囲の期待を遥かに上回る大手柄を挙げ、褒美として集落一の美少女である族長の愛娘ルッチを妻にもらうことになる。その後も手柄を立てるたびに次々と妻や隷妻をもらいハーレムを築いていく。皆、性格も器量も良い娘ばかりで、喜んでジュムカに尽くしてくれるのだから男としては羨ましい限りだ。

 ただ嫁が多いということは苦労も多い。現代人の感覚を持つジュムカは、妻も隷妻も平等に愛そうと思いつつも、草原の掟で妻同士の序列に気を遣わねばならない。家族が増えればそれだけ養う負担も増える。愛する妻たちを守るためには、より強く自分を鍛えねばならない。さらに戦士として部族の中での地位が上がっていくにつれて仕事と責任とが降りかかってくる。若くして激務に奔走できるのは、タフな男ならではだろう。

 そして草原のすべての部族の存亡をかけた大いなる戦乱の時代が幕を開ける。果たしてジュムカは愛する妻と大切な部族の仲間たちを守り抜くことができるのか。戦いの中で草原の覇者へと駆け上がっていく若き戦士の熱い戦いに注目だ。

文=愛咲優詩