女友達って大切で、めんどくさくて、時々ものすごく怖い――。女子高生の人間関係をリアルに描く衝撃作

マンガ

公開日:2016/5/17


『17歳の塔』(藤沢もやし/講談社)

 中高一貫の女子校に対する印象はいかなるものだろうか。「お嬢様」「イジメがすごい」「百合の世界」などなど、様々な意見が挙がると思う。正直、学力や学費の差、校風により、中高一貫の女子校はそれぞれ全く違った世界なので、一概に「こういう場所です」と決めつけることはできない。

 個人的なことで恐縮だが、筆者も中高一貫の女子高だった。けれど、テレビなどで見かける女独特の壮絶なイジメも(多分)なかったし、『マリア様がみてる』的な百合の世界もなかった。校風もあったと思うが、個性的な女の子たちがマイペースに過ごしている。そんな雰囲気だったと思う。

 だが、ゆるい学園生活を送る一方で、本書のような女子校も「どこかに」あったはず。というより、女子校、共学問わず、「女子」が集まればこういった「感情」「状況」は必ず生まれるだろうと、怖いほど共感してしまうマンガが発売された。

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17歳の塔』(藤沢もやし/講談社)は、『うる星やつら』『犬夜叉』などで有名な大作家、高橋留美子先生もその表現力に感嘆した、新進気鋭のマンガ家、藤沢もやしが描いた「女子トモダチのリアルマンガ」だ。

 舞台は中高一貫の女子高。スクールカーストの頂点に立っていた女王様気質の理亜(りあ)は、周囲にチヤホヤされながら何不自由なく女子高生活を過ごしていた。しかし、とある事件がきっかけで、自分になつき、子分のように思っていた地味な女性徒、小田嶋美優(おだじまみゆう)にスクールカーストの頂点を奪われてしまう。

 クラスメイトから反感を買い、一気にカーストの底辺へと落ちてしまった理亜。それでも、持ち前の気の強さから、たくましく学園生活を送るが……。

 本書の主人公は一定ではない。短編連作のようになっており、理亜が中心の話もあれば、理亜の取り巻きだった茉夏(まなつ)が、クラスの新たな女王となった美優に気に入ってもらえるよう、奮闘する話もある。茉夏のような「太鼓持ち」は、少なからず、どのクラスにもいるのではないだろうか。

 他には、女子三人グループの苦悩を描くお話がある。三人グループは難しい。「二人ペアで」と指示された体育のストレッチの際や理科の実験の時、一人はハブられてしまうからだ。そんな三人グループの一人、しのぶは、同じサッカー部のクラスメイト、佳代がちょっと苦手。しかし、同じクラスには他に仲のいい子がいないので、二人でいたところ、なつめちゃんという女の子がグループに加わる。天然ボケでかわいい感じのなつめちゃんの登場に、佳代と二人きりが気まずかったしのぶも、最初は喜んでいたが……。このなつめちゃんが、実は食えない女の子だったのだ。

 他、オタクで仲良く、平和に過ごしていた三人グループに、クラスメイトからハブられている理亜が関わってきて、一悶着があったりと、「女子の友達関係で起こる様々な事件」をリアルに描いている。

 本書のすごいところは、女子なら一度は抱いたことのある「汚い感情」が隠すことなく、むしろ見せつけるように、物語に活写されているところだ。

 誰でも、スクールカーストの頂点に立ちたいと思ったことはないだろうか。頂点の取り巻きになり、平凡な自分を少しでも偉く見せたいと見栄を張ることもあるだろう。三人グループの中で、「ハブられたくない」と心の中で思いながらも、「私は一人でいいよ」と気を遣ったこともあるはずだ。

 思春期独特の息苦しさや、繊細な優しさ、そして怒りや狂気が、あますところなく見事に描かれている作品。決して読後感が良いわけではないのに、私は必ず、2巻も買ってしまうだろう。

文=雨野裾