「カード類は5枚だけ入れる」「千円札を手前に入れるとお金は逃げる」…お金の通り道を整える方法とは?

マネー

公開日:2016/5/17

『お金を整える』(市居 愛/サンマーク出版)

はたらけど

はたらけど猶わが生活楽にならざり

ぢっと手を見る石川啄木『一握の砂』

 本当に、まったく楽にならない。ぢっと手を見っぱなしだ。女性誌の「30歳までに1000万円貯めるテク」特集を読んでは、ため息が出る。そもそも30歳もとうに過ぎているので、なおさらため息が止まらない。

 1000万円とは言わないので、来週までに5000円貯まらないものだろうか……。そんな志の低すぎる筆者にぴったりの本を見つけた。『お金を整える』(市居 愛/サンマーク出版)。本書によると、お金は“ない”のではなく、“散らかっている”のだという。

 お金が散らかっている状態は、散らかった部屋と同じ。部屋が散らかっていると「気が散る」ように、お金の通り道が散らかっていると「お金が散る」のだそうだ。お金の通り道とは、財布、通帳、冷蔵庫の3つ。本記事では、財布に焦点を当てて紹介したい。

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 ポイントカード、割引券、健康保険証、病院の診察券、そしてレシートの束……。パンパンに膨れ上がった財布は、まさに散らかり放題。まずはここを整理する必要がある。方法として、「カード類は5枚だけ入れる」。……ご、5枚!? 筆者の財布に入っているカードは13枚。5枚では、とてもじゃないが暮らしていける気がしない。

 入れるべき5枚の内訳はこうだ。【クレジットカード1枚、ポイントカード3枚、割引券0枚、キャッシュカード0枚、証書類1枚】。……ポイントカード3枚!? 割引券に至っては0枚! これでは節約にならないではないか。

 しかし、ポイントカードを発行しているお店側の意図を考えると、合点がいく。「お店は、あなたにくり返し来店をしてもらうこと、そして、あなたの購買行動を知ることが目的です」。つまり、その店に行きたいから行くのではなく、ポイントカードがあるから行くという、本末転倒に陥っているのである。「割引券0枚」も、同じ理由だ。「コーヒー10円引き券」を後生大事に財布にしまい、「本当はスタバに行きたいんだけど、割引券あるしなぁ」と、その店に入ってしまう。しかも割引は10円。言われてみれば、バカげた話だ。

 さらに、斬新な理論が紹介されている。「千円札を手前に入れるとお金は逃げる」――。“お金をくずす”という表現があるが、くずれたお金はムダ遣いしてしまう傾向があるという。千円札は、一万円札や五千円札がくずれたもの。くずれていればくずれているほど、お金は使いやすくなる。なので、財布の手前には、一万円札を入れること。「お財布を開けたときにまっさきに一万円札が見えると、千円札が見えるときよりもお金をコントロールしようという自制心が働く」のだという。

 カード類を5枚にする、一万円札を手前に入れる。この2つを実践した結果、なんと1000万円貯まっ……てはいないが、1週間で5000円は現実味を帯びてきた。実際、財布をスッキリさせた途端、自然とお金を使わなくなった。財布以外に、「通帳を整える」方法、「冷蔵庫を整える」方法も、実用的で使えるテクニックが盛りだくさん。「節約術の本を買ったものの、その書籍代が一番のムダ遣い」というありがちなことには決してならないであろう、オススメの一冊だ。

文=尾崎ムギ子