ステージ4の大腸がんからの克服! がんを治すために改善した「7つの習慣」

健康

公開日:2016/5/17


『がんになって、止めたこと、やったこと』(野中秀訓/主婦の友社)

 「がんは生活習慣病」と語る野中秀訓氏による書籍『がんになって、止めたこと、やったこと』は、がん患者でない私にとっても驚きと発見の連続だった。普通の会社経営者である彼が、いかにしてがんを克服したか、そのノウハウをまとめた内容だが、これはがん克服記のみならず、健康かつ快適に生きたいと願うすべての人々に贈る「自分に合った健康法を見つけるまでの体験記」でもある。

 46歳だった野中氏はある日、突然の腹痛で病院へ。腸閉塞を起こしていたためにCT検査をしたところ大腸に腫瘍が見つかり、それがきっかけで医師から「ステージ4の大腸がんで、平均生存期間は約12カ月」と宣告されてしまう。肝臓や大動脈リンパ節などへの転移も見られ、「今の治療じゃ治る見込みもない」とまで言われ、野中氏も家族も悲しみに暮れながら抗がん剤治療を始めていくのだが、そこから先の展開が驚きだ。

 野中氏は「自分で情報を集めるところから始めていき、どうしていくかを決める必要があるのが、がんという病気」と考え、大量の本を読んで情報収集し、そこでよさそうだと感じた治療法は「体にいいと考えることはできるだけやる」と、まず試す。信頼が置けそうだと感じた医師や治療者のもとにも、積極的に訪れる。

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 しかし、すべてを鵜呑みにすることはない。集めた情報のなかには相反する意見を唱えるものも出てくるが、それらはあくまでセカンドオピニオンであり、判断するのはすべて自分の感覚だ。「誰に何と言われても自分に合っているかどうかで決めていく」と語り、調べて試し、自分の体の反応を観察し、合うものと合わないもの(抗がん剤もその一つ)を取捨選択していく。

 客観的な視点を持って考える人だからこそ、野中氏は本書のなかで「がんが発覚するまでの『7つの悪い習慣』」「がんを治すために改善した『7つの習慣』」「がんになった場合の『7つの指針』」を自分の経験を頼りに、自分の言葉でまとめ上げている。たとえば、がんを治すために改善した習慣には以下の通りだ。

【がんを治すために改善した「7つの習慣」】
1:食事改善
2:早寝の習慣化
3:解毒
4:ハーブ&生薬
5:ヨガ&鍼&マッサージ
6:思考回路(ストレス)の改善
7:生活習慣の見直し

 今までの生活を冷静に振り返り、なぜ自分ががんになったかを考え、新しい方法を次々と試していった結果、導き出されたのが上の改善点だ。とくに「食事の見直しを中心とした生活習慣の改善」が軸となっており、糖質制限と小麦粉制限、およびストレスマネジメントの点で生活を一変させている。もともと野中氏が送っていた「7つの悪い習慣」とは真逆の生活で、ここまでの変化を体に覚えさせるのはさぞ大変だったのではと思う。

 だが、野中氏は「自分で情報を求めて、『こうしたら治るんじゃないか』と思えてきたようなときは希望が生まれます。ゲームの攻略法を見つけるような感覚です」と語り、ハードな食事制限も「『制限がいろいろある中で何を食べるか』を楽しむ」ことで、前向きにトライし、自分なりの克服法を探り続ける。もちろん不安や葛藤もあったことは想像に難くないが、乗り越えようとする強くて冷静な精神力、そして家族の支え(家族とのエピソードも心に染み入る)もあって、告知から一年後にはついにCT検査によって、がん細胞の消失(寛解)が認められた。

 これは野中氏が四苦八苦しながら、がん克服できる生活習慣をまとめたノウハウで、あくまで彼の体に合うオリジナルのレシピのようなものだ。万人に合うかどうかはわからない。しかし、彼の姿勢から私たちは大切なことを学ぶことができる。それは、がん克服のような闘病であれ、健康的に痩せたいと願うダイエットであれ、大切なのは自分に合うスタイルを探すことではないだろうか? ということだ。

 世の中には情報があふれている。「○○さんが体に悪いと言っていた」「これは○○タイプの人にしか合わないのだろう」など、負のポイントを探って結局やらない、というのも一つの選択肢だろう。しかし情報に振り回されることなく、自らの手で取捨選択をすること。そうすることで「がん克服」という最大の結果を得た彼から、自分を信じる生き方さえも教わったように思う。がんに苦しむ方々はもちろん、健康が気になるすべての人にとって参考になる一冊だ。

文=富永明子