元国税調査官が5000年の歴史にガサ入れ! お金の流れでわかる世界の歴史

文芸・カルチャー

更新日:2017/11/15


『お金の流れでわかる世界の歴史 富、経済、権力・・・・・・はこう「動いた」』(大村大次郎/KADOKAWA)

歴史は宗教がらみの戦争で動いているように思われがちだ。しかし、実は国が栄えたり滅びたりする陰にはお金の流れがある。一地域の文化が世界中に広がっていく背景にも経済が深くかかわってきた。今の世の中も、お金の流れが国の政治を動かしている部分が見え隠れしている。そこで、今回は元国税調査官が独自の視点で世界の歴史をひもとく『お金の流れでわかる世界の歴史 富、経済、権力・・・・・・はこう「動いた」』(大村大次郎/KADOKAWA)を紹介する。

古代エジプトは民も豊かだった!

長きにわたって栄えた場所の1つに古代エジプトがある。その3000年に及ぶ繁栄の理由を、「砂漠によって他国が攻め込めなかったため」とか「ナイル川流域の土地が肥沃だったため」などという人もいる。 しかし、エジプトの周りに砂漠がありナイル川があるのは今も昔も変わらない。そこで、著者は徴税システムに注目した。国を栄えさせ、民に満足な生活をさせるための適度な徴税だ。エジプトではファラオだけが贅沢な暮らしをしていたのではなく、徴税システムによって民もそれなりに豊かな生活をしていたことがわかっている。

滅びた理由は徴税役人の腐敗

著者曰く、古今東西、悪代官が生まれる背景にあるものは、いずれも税金を取れば取るだけ徴税役人の懐に入る仕組みだそうだ。その点古代エジプトでは、税を余分に徴収した役人は厳しく罰せられる決まりがあった上に、租税の減免も細かく決められていた。更に古代エジプトの徴税役人「書記(セシュ)」は決められたとおりに振る舞いさえすれば他の仕事よりも楽に十分な収入を得られる職業であったため、わざわざ危険を冒して悪代官になる必要はなかったのだ。

ところが、ファラオの目を盗んで過分な税金を取り、自分の懐に入れようとする役人が現れると、国は急に滅亡への道を歩み始める。古代エジプトほどしっかりとした罰則を決めていてもそれを犯してまで儲けようとするやからが出てきてしまったのだ。

徴税役人による中間搾取が行われるようになると国の財政が傾き始め、国を立て直すためにファラオも重税を課さなければならなくなる。すると、民の心に不平が生まれ、それが大きくなると、税負担に耐え切れなくなった農民が土地を捨てて逃げ出す。それまで農作業だけでなくナイル川の堤防補修も担ってきた人手が無くなると、土地はどんどん荒れ果て、国力が弱くなったタイミングに対抗勢力が攻めてくるため国が滅びるのだ。これと同じことは、古代ローマでも起こっているし、日本の荘園制度が封建制度へと移っていった過程でも起こっている。徴税役人の不正や脱税は国を滅ぼす共通の原因だったのだ。

産業革命も植民地支配も数々の戦争も裏にあるのはお金の流れ

産業革命もフランス革命も、スペインやポルトガルによる植民地支配も、すべてはお金の流れを見ていけばなぜその時期にその場所で起こったのかがよくわかると著者は言っている。それぞれ別の場所で起こっていることでもまったく無関係の別個のものではない。世界の国々は個々に歴史を積み重ねているのではなく相互に関わり合いながら歴史を紡いでいたのだ。

最近のわかりやすい例を挙げるなら、アメリカのリーマンショックがそれに当たる。アメリカ一国のサブプライムローンの問題が全世界を巻き込んだように思われているが、本当は世界中で行われていたマネーゲームが引き起こしたとも言えるものだ。著者は今の時代はフランス革命の頃と似ていると本著の中で述べていた。今もお金の流れが歴史を動かしている最中なのかもしれない。

文=大石みずき