第3回「暮らしの小説大賞」受賞作決定! 大賞は神奈川県の限界集落に住む女性の作品

文芸・カルチャー

2016/5/23

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 “暮らし”と“小説”をつなぐ存在になるべく、選考委員に暮らしのスペシャリストを迎え、2013年6月からスタートした新しい文学賞「暮らしの小説大賞」。同賞の特徴は、作品テーマが“衣・食・住”であれば、ジャンルや小説の執筆経験の有無は不問で、誰もが気軽に応募できること。見事大賞に輝けば単行本として出版され、全国の書店に並べられる。つまり作家デビューが約束されているのだ。

2016年5月19日(木)、第3回「暮らしの小説大賞」受賞作品が発表された。大賞に輝いたのは和田真希氏の『遁(とん)』。さらに、今回初の出版社特別賞を小林栗奈氏の『利き蜜師』が受賞した。

大賞受賞作『遁』あらすじ
ごく普通の核家族で育ったものの、予期せぬうちに家族から孤立した絵梨は、高校卒業をきっかけに小田原の家を出る。東京での自由な生活は数年続いたが、社会人になってしばらくした頃、食事が喉を通らなくなっていった。徐々にあらわれてきた、人から認めてほしいという強い欲求は、絵梨を精神的にも肉体的にも追いつめていく。仕事、家族とのこと、友達付き合い…… 自分を取り巻くすべてのことに絶望した。

東京での生活に疲れきった絵梨は、小田原に戻ることに。家庭菜園に興味を持ち、手順も分からぬままに種をまき、慣れない鍬を握った。あるとき、地元新聞の記事に目が止まった。丹沢地方の山奥を開墾し、農耕や養鶏などを「楽しいから」という理由で行なっている若者の記事だった。農業の手ほどきを受けることを期待し、絵梨は若者を訪れる。そしてその日から、山奥での農的暮らしが始まった。

人間はおどろくほど不完全だ、だから暮らしは助け合える。育てる、作る、眠る、繕う、食べる、笑う。全身で暮らすことは、全心で生きることだったと絵梨は気が付いていく。

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和田真希(わだ・まき)
1984年静岡県富士宮市生まれ。多摩美術大学美術学部卒業後、ヨガインストラクターを経て、2011年より神奈川県西丹沢の限界集落に移住。農的生活のなかで、子育て、絵の制作、執筆を行う。

出版社特別賞『利き蜜師』あらすじ
利き蜜師の卵、12歳のまゆが暮らす平和な村に、不穏なものが忍び寄っていた。奇病トコネムリ、そして獰猛な銀色の蜂。師匠の仙道は、かつて封じた魔物が目覚める気配を感じていた。二人は仙道の旧友カスミから利き蜜の依頼を受けた。尽きることがない不思議な蜂蜜の壷があると言うのだ。

カスミとまゆは銀蜂に襲われる。まゆの力によって時空を越えた先は、カスミの過去世だった。そこはまた仙道の過去でもあった。二人はかつて、同じ学び舎で過ごし、銀蜂と呼ばれる魔物と闘い、仙道は不死の、カスミは孤独の呪いを受けたのだ。

仙道は、蜜の世界からカスミとまゆと救い出すために、長く封印していた技を使い世界の扉を開けようとする。まゆは、尽きぬ蜂蜜がカスミの祖母が残した枯れない愛の証だと気づく。それは呪いを打ち破る力となった。

銀蜂は去り、世界にはつかの間の平和が戻った。まゆもまた、利き蜜師になる為に一歩を踏み出すのだった。

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小林栗奈(こばやし・くりな)
1971年生まれ。東京都多摩地方在住。表の顔は地味で真面目な会社員だが、本性は風来坊。欲しいものは体力。2015年、第25回ゆきのまち幻想文学賞長編賞受賞。

 選考委員を務めたのは、フードスタイリストの飯島奈美、BACH(バッハ)代表・ブックディレクターの幅允孝、作家・エッセイストの石田千の3名。選考委員はそのままに、2016年11月25日(金)締め切りで第4回「暮らしの小説大賞」の募集も開始されている。詳しくは公式サイトをチェックしてみよう。
⇒「暮らしの小説大賞」公式サイト