射精介助を受ける身体障がい者、性風俗で働く女性障がい者…。彼らの「性」の現状とは? 【『セックスと障害者』後編】

社会

公開日:2016/5/27


『セックスと障害者』(坂爪真吾/イースト・プレス)

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 『セックスと障害者』(イースト・プレス)の著者・坂爪真吾さんが代表理事を務める、一般社団法人ホワイトハンズの活動のひとつに、デリヘルの待機部屋に弁護士とソーシャルワーカーを派遣して、在籍女性の生活・法律相談に無料で応じる「風テラス」というものがある。
借金返済のためにデリヘル嬢になる主婦など、「女性の性と貧困」が昨今話題になっているが、「激安風俗店」には軽度の障がいを持つ女性も多いというウワサも、まことしやかに流れている。坂爪さんに真偽を確認すると、精神障がいや発達障がい、軽度の知的障がいを抱えた女性たちが、少なからず在籍していると教えてくれた。彼女たちのなかにはお金や時間の使い方、そして感情の制御が難しいことから、さまざまな問題を起こす女性もいるそうだ。だが障がいを持っている女性を風俗で働かせることに、どうしても「搾取のにおい」をかぎとってしまうのだが……。

「搾取と支援ってある意味、紙一重の部分があると思うんです。しかし店側には決して搾取の意図はなく、女性にお客さんがついて稼いでほしいと思っています。そして障がいを抱えた女性は決まった時間に起きられなかったり、集中力が持続しなかったり、薬の副作用で思うように頭や身体が動かず、人間関係をうまく築けないところがあります。そういう人が一般企業の正規雇用者になるのは難しいのが現状ですし、福祉的就労の時給は最低賃金以下というところも多い。彼女たちが働く場所として風俗が機能しているという現実は、善悪の二元論では到底語れません。だったらお客さんなどによる性暴力やストーカー、盗撮などの犯罪に巻き込まれないように、安全に安心して働くことを支援する必要があると思います。

 かつてはそういった女性たちを施設に入れて、保護する動きもありました。しかし自分にとって何が幸福かはそれぞれ違いますし、障がい者にも自分で幸せを追求する権利はあります。辞めたくて仕方がない人を無理やり働かせるのは論外ですが、性産業で働く女性を無理に辞めさせるのではなく、第三者が支援の手を差し伸べられるような仕組みを整備することで、間接的に見守ることができるはず。またそれと並行して、性産業以外の仕事場や居場所を増やすための、ソーシャル・アクションも必要なのではないでしょうか」

「障がいのある人の性を尊重することによってはじめて、障がいのある人もない人も共に生きることのできる、真の共生社会を実現するための一歩を踏み出せる」と、坂爪さんは力説する。そして同時に、日本は1970年代から40年以上も、知的障がい児の性教育に取り組んできた歴史があることから「日本は決して、障がい者の性の後進国ではない」とも語る。

 もはや乙武さんにギョッとしている場合ではないのかもしれない。その行為自体は褒められたものではないが、障がい者だって不倫もすれば浮気もする人がいて当たり前。だから何か変えるものがあるとすれば、それは健常者の意識の方かも。そういう意味でも、身近に障がい者がいる人はもちろん、いない人にとっては尚更必要な一冊と言えるだろう。

取材・文=玖保樹 鈴