土壇場で人を動かすのは“情”!博報堂が越えられない電通マンの「鬼気くばり」とは?

仕事術

公開日:2016/5/30


『電通マン36人に教わった36通りの「鬼」の気くばり』(ホイチョイ・プロダクションズ/講談社)

 業界最大手の電通と2位の博報堂の大きな差とはプランニング力でも調査力でもなく、社を挙げて伝承されてきた細かな気くばり のノウハウであるという。もともと電通嫌いだった著者らが長年見聞きし、分析した結論は「電通という会社は、社を挙げて木下藤吉郎(後の豊臣秀吉)になろうとしている!」ということだ。

 『電通マン36人に教わった36通りの「鬼」の気くばり』(ホイチョイ・プロダクションズ/講談社)には、著者らが電通営業マンたちから聞いて回った鬼の気くばりが満載だ。なお本書は2012年に刊行された『戦略おべっか どんな人でも、必ず成功する』に一部加筆・修正のうえ改題された書籍である。

小さな貸しを作る気くばり
・安物の同じボールペンを必ず2本持ち歩く
・接待の席には、相手の家族向けのおみやげを用意する。

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 打ち合わせに得意先がペンを忘れたら、サッと取り出して差し上げる。接待のおみやげは持ち帰る相手のことを考えて軽いものを選ぶのは当然としても、相手の家族が喜ぶおみやげを用意する。そうすることで遅く帰宅する得意先の顔が立つようにする。これも「貸し」と呼べる気を配りだろう。

何事も相手より下から
日本には昔から目下の人間は、目上の人間より高い位置に立たない、という明快な習慣がある。
・名刺は1ミクロンでもいいから、相手より下から出す。
・書類に上司と並んでハンコを押すときは、上司より下に斜めに傾けてつく。

 電通マンともなるとその徹底ぶりはハンコの押し方にまで及ぶ。低いだけではなく、少し傾けて、あたかもお辞儀をしているかのように演出するとは、少々やりすぎとも思えるがそれこそが鬼の気くばりなのである。

メールの手軽さに甘んじない
文字だけで伝わる情報は会話で伝わる情報量のわずか30%に過ぎない。
・お詫びやお礼をメールだけで済まさない。
・ビジネス・メールは、極力、人間の体温を残す。
・メールを送ったら必ず電話で確認する
・メールでCCは多用しない。相手の文面は要約して送る。

 今やメールなどの電子文書のやり取りはビジネス、プライベート共に欠かせないものだ。普段のやり取りでも取引先には「いつもお世話になっております」、上司には「お疲れ様です」の一言を必ず添える。さらに重要な内容や感情を伝える場面ではメールだけで済ませることは絶対にしてはいけない。

 この他にも本書には、多数の気くばり術と秀吉が清州城を3日で修繕した功績や電通が三井を勝利に導いたディズニーランド招致のエピソードなど「鬼の気くばり」がビッグプロジェクトを成功させた事例などを紹介し、「土壇場で人を動かすのは“情”である」と締めくくっている。

 テクニカルなビジネス書を参考にしてもイマイチ結果が出ない。それなりに評価はされているが、決定的な場面での取引先や上司や判断が芳しくないという人は、「鬼の気くばり」で取引先や上司の「情」に戦略的に迫ってみてはいかがだろうか。

文=鋼 みね