「死ななけりゃそれでいいわ……」疲れたお母さん共感必至!“子育てあるある”奮闘記

コミックエッセイ

公開日:2016/6/2


『母親ヒマなし24時』(カツヤマケイコ/双葉社)

 育児コミックは数あれど、ナニワの母ちゃんが描く作品はひと味違った面白味がある。

 Web文芸マガジン「カラフル」で大人気の「ごんたイズム」シリーズもそのひとつ。「ごんた」とは「いたずらで手に負えない子ども」の意味だ。このたび発売されたシリーズ最終巻『母親ヒマなし24時』(双葉社)は、「ごんた」な長男・柊太くんが8歳に成長し、5歳になった妹・京香ちゃんに3人目の妹・駒子ちゃんも加わって、一家はますますにぎやかに。しかし同時に、おバカな男の子と自己主張が激しい女の子の違いもはっきりしてきて、子育ての難しさに笑えるやら呆れるやら……。同じママ世代の共感度がぐっと高まる内容になっている。

 たとえば柊太くんは、小学校の入学式でスーツの下からシャツの裾がはみ出たまま。親へのメッセージカードの言葉は「なにかかってくれてありがとう」と意味不明。記念撮影ではカメラマンに何度も注意され、違う子の靴を履いて帰ってくる始末。学校がはじまってからも失くし物、忘れ物は日常茶飯事で、呆れ果てた作者のカツヤマケイコさんはこうつぶやく。

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「もうアホでもなんでも死ななけりゃそれでいいわ……」

 しかし、これで終わらないのがナニワの母ちゃんだ。何度注意してもいい加減なことを繰り返すダンナを見て、「男ってなんでこんなバカなの!?」「こんなバカな生き物に社会を牛耳られているなんてっ 腹立つ!!」と、世の男性にまで及んだ怒り爆発! その後で、「社会を牛耳る“かしこ”の男性の皆様すみません……。バカなのはうちの男子です。」とお詫びしてはいるものの、「よくぞそこまで言ってくれました!」と拍手したくなるママもいるのでは!?

 一方、京香ちゃんはキラキラ好きのガーリー路線まっしぐらだが、3人目の妹・駒子ちゃんが生まれる前から怒濤の赤ちゃん返り。地雷を踏むと1時間はギャン泣きが止まらない「ぐずり」と、親の気を引く「演技」が得意な女王様として君臨している。

 可愛いだけの赤ちゃんだった駒子ちゃんもどんどん成長して、危険なものを触りまくるわ、食べ物を投げ散らかすわで、みんなやりたい放題である。

 そんな子どもたちの世話に追われている母親本人はというと、髪は抜け、シミは増え、脂肪が溜まったお腹をコルセットでごまかしながらも、着るのはヨレヨレのTシャツとぺったんこ靴……。そんな自分を見るに見かねて、「お母さんは汚くならざるをえない!!」と開き直るセリフなど、なりふり構わず子育てしている世の母親たちの声を代弁している言葉も多い。

 それでも4人目がほしくなって、まだ妊娠してもいないのに「三四郎」と名前をつけているカツヤマさん。なんだかんだ言っても母は強し!だし、めちゃくちゃ大変でもやっぱり子育てほど楽しいものはない! そのあたりの母親の本音がさりげなく、でもストレートに描かれているのもポイントだ。

 育児に疲れたとき、イライラしたとき、読めば元気になれるこのシリーズ。これから一人目、二人目、三人目のママになる人にプレゼントしても、きっと喜ばれるに違いない。

文=樺山美夏