心霊スポットに足を踏み入れると、いったいどうなる……?『実録心霊スポット取材記 ゆうたん』

マンガ

公開日:2016/6/5


『実録心霊スポット取材記 ゆうたん』(ひぐらしカンナ/星雲社)

 僕の地元・宮城県には、「八木山橋」という心霊スポットがある。そこは県民ならば誰もが知っている、自殺の名所だ。だからこそ、誰も近寄ろうとはしない。おもしろ半分で訪れるなんてあり得ない、とされているのだ。

 では仮に、そういった場所に足を踏み入れたとしたら、本当に幽霊を目撃してしまうのだろうか……。そんな疑問を解消するようなコミックエッセイが発売された。『実録心霊スポット取材記 ゆうたん』(ひぐらしカンナ/星雲社)である。本書は、片田舎にある神社で巫女を務めるひぐらしさんが、全国各地の心霊スポットを訪れ、そこで起こった怪異をマンガにしたものだ。収録されているエピソードは、どれも背筋がゾクゾクするようなものばかり。なにせ、「この本はお祓い済です」との注意書きが添えてあるくらい。ぶっちゃけ、手に取らなければよかったと何度後悔しただろうか……。でも、せっかくなので、その恐怖をおすそ分けしようと思う。というか、ひとりでは抱えきれないから!

 まずは、日本屈指の自殺の名所、富士の樹海でのエピソードについて。同行したサイキックカウンセラーによると、次から次へと霊が視えたそう。中でも強烈だったのが、母子心中をした霊。35歳に届かないくらいの若さの母親と、就学前の男の子がふたり抱き合っている姿が視えたのだ。その死因は薬物ということだが、子どもに至っては母親が首を絞めて殺してしまったよう。その母子にどんな悩みがあったのか。当時の心情を考えると、とてもいたたまれない気持ちになる。それはひぐらしさんも同様で、最後に取材のお礼として手を合わせようとしたところ、「関わってはいけないから、手を合わせてはダメ!」と制止されてしまう。やはり、不用意に霊がいる場所を訪れてはいけないのだ。

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 また、ひぐらしさんたちは、沖縄へも飛んだ。沖縄には、戦時中に多くの人が身を投げた喜屋武岬や、数十年前に謎の出火で一家が亡くなった七福神の家、チャイナタウンと呼ばれる巨大廃墟ホテルなど、いくつもの心霊スポットがあるのだ。そしてさらに、沖縄ならではの「ユタ」にも会いに行ったそう。ユタとは神通力を持つ人々のことで、東北のイタコのような存在。そこで出会ったユタは、家相からの開運カウンセリングを得意とする人で、ひぐらしさんの間取りを見ては今後の人生についてアドバイスしてくれたという。霊だけでなく、不思議な人間も住む。それが沖縄なのだ。

 本書では他に、青森で有名な霊道スナックでの除霊エピソードや、東京・江東区での蛇の霊との壮絶な闘いについても収録されている。そしてなにより怖いのは、合間合間で心霊写真が収められていること。地面から生える生首や侍、ドクロのような顔、そして除霊の最中に写り込んだ霊の姿まで。ページをめくるたびに、「ひぃっ」と小さな声が漏れてしまうほど恐ろしかった……。

 けれど、あとがきにてひぐらしさんは、「笑って読んでください」と述べている。笑うことが結界になり、浄化になるのだとか。そして、「楽しんで豪快に笑って生きている人のエネルギーは、マイナスな存在に負けやしない」と締めている。そう、本書の正しい読み方は、笑いながらおもしろがって読むことなのだ。ということで、ぜひ読んでみてほしい。というか、お願い読んで! ひとりにしないで!

文=五十嵐 大