正しい「焼香の作法」は2回?「葬儀」と「供養」に関するあらゆる疑問を解決!

社会

2016/6/4


『写真とQ&Aでよくわかる 曹洞宗の葬儀と供養 ~おくる~』(曹洞宗岐阜県青年会/水曜社)

 1984年に公開された、伊丹十三氏の初監督作品である映画『お葬式』。初めて葬式を出すことになったある家族が、病院の霊安室で納棺するかしないかで揉めたり、お坊さんをどう出迎え、そのお布施の妥当な額はいくらなのかで悩んだり、ハウツービデオを見て葬儀のポイントを頭に入れたり、長いお経で足がしびれてしまったりと、葬儀の手順やしきたりに翻弄されてあたふたする人たちを描いた作品だ。もう30年以上も前にこのようなコメディが作られたということは、その頃からすでに葬儀で何をすべきかの手順を知っている人が減り始め、現在につながる「葬式はしなくていい、墓もいらない」という風潮が始まっていたことがわかる。

 しかしいざ自分が葬式を出すとなると、喪失感と悲しみと忙しさで気が動転、葬儀の段取りはすべて任せっきりになり、後で葬儀屋から届いた数百万円単位の請求書を見てビックリなんて話もよく耳にする。それはほとんどの人が「葬儀初心者」状態(喪主になるのは人生で何度もあることではないし、葬儀に参列したことがあっても何がどうだったか復習はしないはずだ)であるため、葬儀で行われることにはどんな意味があり、いったい何のためにやっているのかを知らないことに原因がある のではないか?

 曹洞宗の若いお坊さんたちによってまとめられた『写真とQ&Aでよくわかる 曹洞宗の葬儀と供養 ~おくる~』(小島泰道監修、曹洞宗岐阜県青年会編著/水曜社)は、亡くなった人を安置してお経をあげる「枕経」から火葬場で骨を拾う「拾骨」まで、さらに四十九日法要である「中陰」や、◯回忌として行われる「法事」など、葬儀と供養で行われることとその意味が写真とともに説明され、とてもわかりやすい。

 例えば「戒名」の項目では、戒名とは「死者の名前」ではなく、「お釈迦さまの教えを拠りどころとして生きていく人に授けられる『仏弟子の証し』としての名前」と説明されている。つまりこの名前は、故人が「仏弟子として新しい命を授かった」ということであり、自分で名付けられないのにはそういう理由があることもわかる。

 また葬儀に参列した際、どうしたらいいか迷ってしまうのが「焼香」の作法だ。標準的な曹洞宗では、焼香台の前に進み出たらまず導師と故人に対して合掌して礼拝、次に香をひとつまみして額に押しいただいて念じてから香炉に焚き、再び香をひとつまみして今度はそのまま香炉へと焚いて、再び導師と故人に対して合掌礼拝、席に戻るというのが作法だそうだ。最初の焼香は「主香」(しゅこう)といって、故人へ香りを届ける供養の意味があり、二度目は「従香」(じゅうこう)といって、次の焼香者まで炭が消えないよう火種を保ち、香煙が立ち上り続けるようにするものなのだそうだ(ちなみに参列する人が多い場合は従香をせず、一回で終わらせる場合も多い)。

 本書には、仏教と曹洞宗について解説する章や、コンパクトにまとめられたQ&Aもあるので、仏式の葬儀や供養に関する疑問はほぼこの一冊で解消できるだろう。もちろん宗派によって意味やしきたりが違うこともあるだろうが、悼む気持ちは同じ。亡くなった人を送るとはどういうことなのか、檀家制度が希薄となり、上の世代から意味を教えられる機会が少なく、葬儀や供養を簡略化しようとする時代だからこそ知っておくことがとても大事なのだ。その上で、家族や自分の場合をどうするか考えてほしい。

 映画『お葬式』のラスト、夫を亡くした妻が「これから仏様になった夫と次の暮らしを始める気がする」と挨拶するシーンがある。葬儀をすることで家族は死に向き合い、より生が輝き出す――死はすべての終わりではなく、新しい始まりでもあることも本書は教えてくれることだろう。

文=成田全(ナリタタモツ)