100年周期で訪れる“怪談ブーム” その謎に迫る!?

文芸・カルチャー

更新日:2017/11/28

 東雅夫の『なぜ怪談は百年ごとに流行るのか』(学研新書)は、日本推理作家協会賞受賞後第1作となる最新刊。  怪談は100年周期で流行するというかねてからの持論をもとに、怪談文芸の黄金時代を近世から現代まで辿ってゆくユニークな文学史の試みだ。
  
 「1804年が文化元年、1904年が小泉八雲の『怪談』、そして2004年には怪談専門誌である『幽』(メディアファクトリー)創刊と、怪談文芸のピークはほぼ100年ごとに訪れています。数字の遊びといってしまえばそれまでですが、そこから見えてくるものがある」と東さん。
  
 「怪談が流行るための条件はあるような気がします。世情が安定していて、なおかつ現実崩壊への不安が兆していること。作家の感覚が鋭敏にそれをキャッチして怪談を生みだすのでしょう」
  
 本書では、このほどの東日本大震災との関係から、怪談のもつ〈慰霊と鎮魂〉の役割についても多くの言葉が費やされている。
  
 「本来怪談には〈慰霊と鎮魂〉の側面がありました。語る努力を怠ってきたわが身を反省しつつ、“怪談なんて不謹慎だ”との意見にはしっかり反論していきたいと思っています。大正12年の関東大震災の後、怪談文芸は衰えるどころかますます盛んになった。現代は『幽』もあることですし、怪談文化の普及と浸透に努めてゆきたいですね」
  
 温故知新の精神に立ちつつ、怪談の現代と未来を見すえた本書。時代を代表する作品の名シーンがいくつも抜粋されており、さながらミニ・アンソロジーといった趣もあり、ビギナーからマニアまでさまざまな楽しみ方ができる一冊だ。この夏は本書をガイドに、怪談の歴史を遡ってみてはいかがだろうか?
  
(ダ・ヴィンチ9月号 怪談通信より)