醤油ラーメンにタバスコ?ポタージュスープにラー油!意外に合う調味料はこれだ【やってみた】

食・料理

公開日:2016/6/16

味つけ上手になれる!調味料使いこなし手帖
『味つけ上手になれる!調味料使いこなし手帖』(漫画:まめこ 原案・監修:青木敦子/KADOKAWA)

 料理をする時に、調味料をやたら色々使ってしまう。例えば炒め物をする際、塩コショウをして醤油をちょっと垂らし、酒とみりんを入れて、めんつゆもほんの少々、みたいな風にとりあえず片っ端から台所にある調味料を入れていく。カレー粉も少し足しておくか。

 そうするとなんだか、料理が上手になった気がして楽しいのだ。だが、結果的には何味とも言えないぼやけた味わいの料理ができあがる。本に喩えるなら、作者の言いたいことがわからない、みたいな味。

 そんな風に、調味料の使い方をきちんと考えぬまま適当に生きてきた私にとって、指針となるような一冊が出版された。漫画:まめこ 原案・監修:青木敦子『味つけ上手になれる!調味料使いこなし手帖』という本がそれで、料理研究家の青木敦子さんが蓄積してきた調味料使いのノウハウを、まめこさんによる漫画で徹底的に解説してくれる内容である。

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 冒頭、“基本の「さしすせそ」”の項で砂糖について解説しているのだが、料理をする時に砂糖は一番最初に入れた方がいいのだそうだ。「味がしみ込むのに時間がかかる」「塩よりも粒子が大きいから」というのが理由とのことなのだが、調味料に入れる順序があるなんて発想がまったく無かったため、この時点で早くも自分の“調味料観”が塗り替えられた気がした。

 調味料を入れるタイミングの話だけでなく、調味料同士の相性や調味料が体にもたらしてくれる作用のことなどが多面的に紹介されていて、これまで2次元だった私の調味料のイメージが一気に3Dになって飛び出したり奥行きを持ったように思わせてくれる本書だが、もう一つの面白味は様々な調味料と、それに合う料理や食材が多数紹介されているところ。例を挙げてみると、「味噌+卵かけご飯」、「胡椒+チーズケーキ」、「豆板醤+ナポリタン」など。どうです!なんか全部「ふーん、えっ!?」ってなりませんか。

 こんな風に意外すぎる組み合わせが大量に紹介されているものだから、そりゃあ試してみたくもなる。そこで今回は本書で紹介されているアレンジのアイデアの中から個人的に気になって仕方なかったものを、いくつかその通りに食べてみた。

タバスコ+ラーメン

 まずは、「タバスコ+ラーメン」だ。ラーメンにタバスコかけて食ってるやつがいたら二度見してしまいそうだ。実際、今までラーメン屋の卓上にタバスコが置いてあるのを見たことはない。どう考えても意外な取り合わせだが、どうだろうか。

 試すにあたり、最近購入した家庭用の製麺機で自家製の麺を作り、スープも自前で用意してラーメンを作ることにした。ハンドル式の小型製麺機は昭和中期頃に一般家庭に普及した古いもので、オークションサイトなどで中古品が安く売られているのだが、思い切って買ってみるとこれがなかなか楽しいのだ。


 詳細は割愛するが、小麦粉とかんすいと水を一定量混ぜ合わせてこねこねするだけで、かなり美味しい麺ができあがるので驚く。


 スープはスーパーなどで売っている中華ダシをベースにした醤油味で、店員のやる気がまったくない海の家ぐらいのレベルには達していると思う。さて、できあがったラーメンに、タバスコを……ためらいながらも投入!


 早速結論を言うけど美味いです!不思議なのはタバスコってかなり刺激的な辛みがあるはずなのに、その強い辛みがスープの味に中和されてすごくマイルドになったように感じるところ。これが調味料の相性ということなんだろうか。スープに酸味が加わり、全体の味に厚みが出たように感じる。タバスコのおかげでマイラーメンが海の家のレベルを超えてきた感があるぞ。

ラー油+ポタージュスープ

 次に、「ラー油+ポタージュスープ」を試してみる。これもまた、頭の中になかった組み合わせで驚いた。


 市販のポタージュスープにラー油を投入する瞬間、なんだかちょっとした背徳感があった。


 しかし、これも相性ピッタリだ。しっくりきすぎて違和感がないほどだ。ポタージュスープの味にキリッとした輪郭が与えられて、風味が濃くなったように思える。旨みの層が一層追加された感じ。調味料の世界、すごいな!

わさび+サバ味噌

 勢いにのってどんどん試す。次は「わさび+サバ味噌」だ。わさびと味噌!?これもまた考えたこともない組み合わせである。


 美味しい美味しいと言ってばかりだが、これもちょっと悔しいほどにぴったりだ。大抵のサバ味噌はもともとが結構濃い目の味付けだと思うのだが、その濃さをわさびの香りがすーっと軽やかにしてくれる。またしても不思議なのは、わさびの辛みが味噌とほどよく溶け合い、それほど鼻にツーンとこないところである。これはもう、誰かがサバ味噌を食べていたら勝手にわさびを乗せてしまいたくなるほどだ。

ケチャップ+肉じゃが

 最後に「ケチャップ+肉じゃが」という組み合わせを。こんなドラマのワンシーンを想像して欲しい。数年ぶりに実家に帰ると、母親が得意料理の肉じゃがを作って待っていてくれた。昔は毎日のように食べていた、まさに“おふくろの味”だ。しばらくうつむいて押し黙った後、そこにおもむろにケチャップをぶっかける息子……。これはもう、かなり不穏な展開を予想させるシーンではないだろうか。

 前置きが長くなったが、それほどに意外性のある「ケチャップ+肉じゃが」だが、やってみるとやっぱり美味しいのである。


 砂糖、みりんの甘さが強調されたもともとの味付けに酸味が加わり、キリッと引き締まった印象になる。本の中の解説によれば、トマトと醤油は、どちらもうまみ成分であるグルタミン酸を含む仲間だそうで、相性の良さも当然なのだとか。勉強になる。

 これまでの私は「和食だからこの調味料、洋風のスープだからこの調味料」といったような先入観で決めつけてしまっていたが、それぞれの調味料の特性をよく理解すればもっと自由な調味料の世界が広がるのだということがわかった。

 さあ、本書を片手に、新しい味覚の扉を開こうではないか!

文・写真=スズキナオ

味つけ上手になれる!調味料使いこなし手帖

『味つけ上手になれる!調味料使いこなし手帖』
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