「伝えたいこと」をうまく言葉にできない人へ。「視点」を変えるだけであなたの言葉に説得力が宿る!

ビジネス

公開日:2016/6/15


『「自分の言葉」で人を動かす』(木暮太一/文響社)

 全く流行っていないけれど、自分にとってはものすごく面白い小説を読んだ時、その想いを誰かに伝えたくなるはず。しかしたいていの場合、相手の反応は「ふーん……」という程度。温度差にがっかりする、なんて経験がある方はいないだろうか。

「自分の言葉」で人を動かす』(木暮太一/文響社)は「伝えたいこと」を「言いたい」ではなく、「教えたい」という視点から口にするだけで、自分の発言に説得力を持たせられる術を大公開している。日常会話から、ビジネスシーンまで、この視点があれば「自分の言葉」で相手の心にダイレクトに伝わる言葉をうみだせるのだ。

 では、具体的に「教えたい」というのはどういうことなのか。

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 本書の中で例に挙がっているのは、著者がとある定食屋で、そこのおかみさんと交わした会話だ。「オススメはなんですか?」と聞いた時、「今日はいいネギが入っているから、すき焼き定食がいいと思うよ」と返されたそう。そしてネギについて熱く語ってくれたのだとか。普通、すき焼き定食なら「肉」の良さを語るはず。このおかみさんの言葉は「決して論理的なわけでもなく、深い知識を披露するわけでも」なかった。なのに、著者はこのおかみさんのいる定食屋の常連になったそうだ。

 例えばここで、おかみさんが「一番人気なのはすき焼き定食です」と、紋切り型の回答をしたら、おかみさんとの会話はまったく印象に残らず終わってしまっていたはず。

 この違いが、ずばり「教えたい」という視点で話すか否か。つまり、「あなたにこれを、どうしても教えたい!」という熱量のある言葉が、相手の心を動かしているということなのだ。

 しかし、注意してもらいたいのは、「教えたいこと」は「言いたいこと」とは大きく違うということ。自分の「言いたいこと」をつらつらと話してしまうことは、誰しも一度はあるはず。ハマっているアニメや趣味について、相手が白けた顔をしているのに、怒涛のごとく話してしまう。それは相手にとって「マジどうでもいい」ことなのだ。

 また、世間一般に言われているようなキレイごと、紋切り型の「血の通っていない」言葉も、相手には届きづらいもの。「世の中に貢献したい」「困っている人を助けたい」など、「これなら相手に認められるだろう」という無難な言葉は、印象が薄く、すぐに忘れられてしまう。他人の心に刺さり、相手を動かすことのできる言葉は「自分の考えを、自分の言葉で話す」ことが大切。「教えたい」という視点は、他人にとって「どうでもいい」と思われてしまう自分本位の「言いたいこと」と、相手の印象に残らない相手主体の「認められたいこと」の中間にある視点なのだ。

 この「教えたいこと視点」を自分の物にすれば、様々なメリットを受けることができる。一つは、人から自然と信頼が得られること。教えたいという感情は本音でできているので、ウソ偽りのない言葉になる。すると、自然と相手から信頼感を強めてもらえる。また、本音のままで相手の喜ぶ話ができるのも大きなメリットだ。

 さて、ここまで「教えたい視点」で話すことが、どれだけ「相手を動かす言葉」になるかを説明してきた。「じゃあ、具体的にどうすれば『教えたい視点』の話し方になるの?」と興味を持った方は、ぜひとも本書を読んでほしい。

 本書には具体的な「人を動かす自分の言葉を引き出すメソッド」も書かれているし、「『これ買ってみたい』と思われるキャッチコピーを書きたい」「『ありがとう』と喜ばれる自然な褒め方で人を褒めたい」「就職活動で『君、採用!』と言われる自己PRをしたい」などなど、場面別の具体策も掲載されている。

 難しい理論や技術は必要ない。ただ、「あなたに教えたい」と思うことを言葉にするだけで、相手を動かすことができるようになる。この驚きをあなたも実感してほしい。

文=雨野裾