108歳現役園長先生がすべての人に贈る メッセージ。子どもの笑顔と珠玉の言葉がつまった『園長先生は108歳!』

社会

2016/6/17


『園長先生は108歳!』(榎並悦子/クレヴィス)

 みんな昔は子どもだったのに、子どもの声は騒音だという大人がいる。みんな昔は子どもだったのに、子どもが犠牲になる悲しい事件が多すぎる。

 子どもは希望。子どもは未来。

 そんな当たり前のことを忘れかけているこの国で、子どもたちのために人生を捧げてきた108歳の園長先生がいる。長崎・晧台(こうたい)寺幼稚園の小笹サキさん。この幼稚園の子どもたちの姿とサキ園長先生の言葉をおさめた『園長先生は108歳!』(榎並悦子/クレヴィス)が発売された。子どもたちの笑顔あふれる当たり前の日常と、100年の時空を超えた園長先生のメッセージがたくさんつまった心温まる写真集だ。

 撮影したのは写真家の榎並悦子さん。8年前に榎並さんが仕事で長崎を訪れたとき、100歳で現役の園長先生がいると聞いて幼稚園に会いに行ったのがはじまりだ。それから年に数回ずつ幼稚園に通って、サキ園長先生と子どもたちの姿を撮り続け、聞こえてくる言葉に耳を傾けてきた。

 幼稚園が開園したのは昭和25年。小笹さんはそのときから園で働き始め、63年に園長に就任。66年間で3363人の子どもたちと触れ合ってきた。現在は車椅子の生活で子どもたちと会える時間は限られているが、登園すると子どもたちが駆け寄ってくる。

 写真集の扉を開くと、108歳の誕生日を祝ってもらった園長先生の微笑みと、「拈華微笑(ねんげみしょう)」(禅語で、言葉や文字を使わず心から心へ伝えることを意味する)の文字が目に入る。

 こうした禅語をはじめとする言葉が、ひとつひとつ胸に響く。

こどもたちに願うことですか? 
なぁんも望んでいませんよ。
まっすぐ育ってくれれば、
もうそれだけで十分。
偉い人にならんでええんです。
人の痛みさえわかれば。

「無念無想」
目を閉じて手を合わせてごらんなさい。
心がすうっと満ちていくとね。
そうしたらお釈迦様が何とおっしゃっているか、
聞こえるかもしれませんよ。

「今日一日。この瞬間。」
何も持たんこどもは、無垢で自由ね。
人間は本来無一物。
だけど大人になるとあれもこれもと欲も出ますね。
欲が出ると自分が見えんけん、
すぐつまづいて、哀しかことです。
死ぬ時は何も持っていけません。心あるのみです。

「今日晴 明日雨」
天気がいい日もあれば、雨が降る日もあります。
どちらもいい日だなぁと思えたらよかね。
雨収山岳青(あめおさまりてさんがくあおし)、
雨が上がれば、輝いて見えるものもたくさんありますよ。

 卒園式の日、サキ園長先生は顔をくしゃくしゃにして涙した。自分の部屋のベッドに戻っても涙は止まらなかった。

 108年の時代の流れの中で思うこと。子どもに伝えたいこと、親に伝えたいこと。サキ園長先生の胸をよぎる思いが、この本を通じてひとりでも多くの人に届いてほしい。

文=樺山美夏