ミステリー界騒然!――史上初の新人女性作家二人同時受賞

文芸・カルチャー

更新日:2017/11/28

 古くは西村京太郎や森村誠一、近年では東野圭吾、桐野夏生、先だって直木賞を受賞した池井戸潤をはじめ、蒼々たる人気作家を輩出してきたミステリーの登竜門といえば、講談社主催の江戸川乱歩賞。  
  
 例年、その受賞は出版界の大きなニュースになっているが、今年は二人の女性作家がダブル受賞するという史上初の出来事に大いに沸いた。  
  
 呪術研究を専門とする文化人類学者と祖父を惨殺された少女が、謎めいた御札をもとに事件を解き明かしていく『よろずのことに気をつけよ』(講談社)。同作について東野圭吾は「物語の流れを早く作るという点では、この作品が一番」と激賞。  
  
 描いたのは1970年生まれの川瀬七緒さんだ。川瀬さんは4年前、唐突に小説執筆を始めたという。「いまだに自分でも理由はわかりません。盆も正月も発熱したときも一行でもいいから書く、という気持ちが起こって、それが今日までずっと続いています」。  
  
 一方の『完盗オンサイト』(講談社)は、海外でも名を知られる天才フリークライマーが、とある事情で皇居から銘盆栽を盗み出す計画にのるという奇想天外な冒険ミステリーだ。作者は1964年生まれの玖村まゆみさん。24歳のときからずっと小説を書き続けてきた彼女は、作家・内海隆一郎の薫陶を受け長らく純文学畑で修行を続けてきた。  
  
「小説を読んでくれていた知人を励まそうと思って『じゃあ次は乱歩賞に応募します!』ってつい言っちゃったんですよ(笑)」。  
  
 エンタメ小説の中でも依然根強い人気を保つミステリーの世界に新たな書き手が加わる。いずれも今後の活躍から目を離せない実力者なのだ。  
  
(ダ・ヴィンチ9月号ブックマークEXより)