ロックの魅力って? 米で話題の小説が解明!

音楽

更新日:2014/2/8

 ここ数年、アメリカで2人の女性作家によるロック・ミュージックをモチーフにした小説が話題となっている。 その一人が、去年発表され、ピュリッツァー賞に輝いた『A Visit From the Goon Squad』の著者ジェニファー・イーガンだ。  
  
 この長編小説は、出版前から大きな話題となり、米公共TV放送PBSのパーソナリティであるニック・シルヴェスターも、自身のウェブにて「音楽がどのように生まれ、リスナーにどのように感じさせるかを描く点で、イーガンはどの音楽評論家よりも優れている」と本作を絶賛する。  
  
 イーガンはシルヴェスターを相手にしたインタビューで次のように答えている。  
  
 「(音楽についての)自分の知識を見せたいがあまり、細かい部分で度を超えそうになったこともある。でも。そうした部分はほどほどの方がいい。(中略)ゴー/シスターズというバンドに耳を傾け、演奏が盛り上がる頃に来て、忘我の状態になる、そんな瞬間を言葉に置き換えるのは本当に難しい。音楽について語ることは、ワインを語るのと似た問題を抱えている」  
  
 もう一方の作家はデイナ・スピオッタである。2006年に出版されたデビュー2作目の長編『Eat the Document』は、その年の全米図書賞にノミネートされて一気に注目を集めた。米公共ラジオ放送のNPRのサイトでは、本作について次のようにコメントしている。  
  
 「実際に音楽から聞き取れるものと言うより、まず登場人物が音楽をどのように受け止めるかを突き詰め、次にその人物が傾倒する音楽が形成する境界線上に、本人が身を投じようとすることに、より重きを置く。だが、音楽に対する服従なのか、音楽に反応することへの強迫観念なのかはともかく、そうした傾倒は作品の重要な部分となる」  
  
 このコメントと先のイーガンの話と共通するのは、楽器編成などのテクニカル部分でなく、リスナーの感性を言葉にすることに、著者が力を注いでいる点にある。  
  
 音楽を語る場合、たしかに知識も必要とされるだろうが、一方で、音楽と向き合うことで醸し出される情感もまた語る価値があるというわけだ。ロックが誕生して久しいが、まだ解明されていないその魅力が、今後小説という表現手段により示される可能性を感じる。  
  
(ダ・ヴィンチ9月号 海外出版レポートNEOより)