仕事の効率をアップさせる「タイムマネジメント」のノウハウを伝授!

ビジネス

公開日:2016/6/27


『時短術―独立起業をビジネス成功に運ぶ』(大坪拓摩/海拓舎出版)

 がんばっているつもりなのに、サボっているわけではないのに、なかなか仕事が終わらない……。「それなら何が問題なのか考えろ」「やり方を見直せ」といわれても、どこが悪かったのか、どう直せばいいのかわからない。結局、早めに取り掛かるか、可能なら残業するかの2つしか解決策が見いだせず、時間を浪費してばかり――。

 本書『時短術―独立起業をビジネス成功に運ぶ』(大坪拓摩/海拓舎出版)の冒頭で、アメリカの実業家の格言が引用されている。いわく「人生を大切にしたいなら時間をムダ使いしてはいけない。人生は時間によってできているのだから」。他の人が2時間で仕上げる作業に6時間かけるのは、時間の“ムダ使い”に含まれるだろうか?

 これが仕事の話ではなく、趣味の話であれば「ムダではない」と言い切れると思う。毎日1時間読書をする人と3時間以上読書する人を比べたところで、そもそも良い悪いという問題ではない。しかし仕事となると話は別。同じ作業ならかける時間が短い人の方が優秀で、会社からも重宝される。

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 本書は基本的に、時間に追われる駆け出しの経営者をメインターゲットに書かれている。が、著者がプロローグで語っているように「会社員の方でも学生の方でも、読んだらすぐに実践でき、その月からでも結果が出せるほどのノウハウとテクニックに満ちた本」だ。

 起業プラスマイナス1年の(つまり、間もなく起業する、または起業して間もない)経営者にとって大事なのは「お金」ではなく「時間の稼ぎ方と使い方」だと著者は語っている。それも単に作業をこなす量を増やすのではなく、量と質の両方を同時に得るノウハウとテクニック。それこそが「時短術」だという。その具体例をいくつか挙げてみよう。

 第2章「自分を磨く時短術」では、生産性や精度の向上といった効果アップのための考え方や工夫が登場する。ポイントは、過去1ヵ月の仕事内容をリストアップし、作業のムダを洗い出すこと。また、15分ごとに「メール返信3通」「読書15~58ページ」といった簡単な記録をつけ、仕事をしているつもりだが実は何もしていない時間を可視化することも重要だ。

 第3章「関係を磨く時短術」では、より具体的なビジネスで売上・収益を伸ばすためのノウハウを学べる。たとえば、仕事の進行管理表を、社内外を含めた関係者全員で共有すること。打ち合わせのアウトプットはその日のうちに、要点を簡潔にまとめた形でクライアントに送っておく、など。こうした情報共有ができていれば、関係者間での共通認識が生まれ、いちいち確認する手間が省けるほか、「気が利くやつだ」とまわりからの評価が上がることも期待できる。

 こういった実践的なノウハウ・テクニックももちろん大事だが、著者は第1章で「コンプレックスがノウハウを生み出す」と語っている。「成功する経営者のモチベーションやノウハウというのは、(中略)コンプレックスがその源泉であることは多くあります」と。要するに、問題解決のための努力や工夫が独自のノウハウを生むのである。

 もうひとつ、気になった項目がある。第1章の5つ目「成功者になる一番早い方法」という見出し。それがわかれば苦労しないとツッコみたくなる、いかにも胡散臭い、けれども期待しがちな文言だが、その内容はとてもシンプルだ。

あなた自身が何を成功と思っているのか、正しい目標との出会いが成功を時短する

 作業スピードに限らず、仕事上の問題解決がなかなかできないのは、何を目標としているのかが明確でないから――。その事実に、思わずハッとさせられた一文だった。

文=上原純(Office Ti+)